特許分析

競争優位のための特許分析~特許マップの事例

江川 祐一郎

競争優位性を示すことは、IPランドスケープに限らず、経営・事業・研究に役立つデータを提供する上で、とても重要なポイントです。

企画・開発・営業といった部門では、新たな技術開発や商品企画をプレゼンする機会が多いと思いますが、まず一発で採用さることは無く、何度も突き返されては再チャレンジ・・・というのが常ではないでしょうか?

突き返される理由の多くは、競合他社や異業種を含む競争環境の分析不足にあります。特に、そのテーマや自社の立ち位置について、客観視できていないプレゼンをとても多く見掛けます。私自身、メーカー勤務時代には何度もダメ出しを食らったことがあります・・・😢

そこで、そのような失敗をしないために、競争優位のための特許分析について、何回かに分けて、解説したいと思います。今回は、特許マップを幾つか取り上げて、それらの特徴について大まかに概説します。

なお、それぞれの特許マップの対象とした事案、特許マップの解釈方法や活用方法、注意すべき点などは、次回以降に順次解説したいと思います。

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特許アクティビティ比較-他社に比べて活発か否か?

主要3社の特許件数推移をステータス別・グループ会社別に比較した積み上げ棒グラフ

このグラフ(積上げバー)は、プレイヤー(出願人・特許権者)別に、特許件数(出願件数・公報件数)の推移を示したものです。

本件では、3社分を上下に並べ、左側のグラフはステータス別、右側のグラフはグループ会社別のシェアを、それぞれ色分けして表示しています。

全体的な特許出願の増減傾向を見るほか、短期的には比較的新たな出願動向に注目、長期的には全体の登録件数に注目することが多いです。これより、他社に比べた特許活動のアクティビティを判断します。

なお、これは「The Lens」の機能を利用して作成しています。

技術ポートフォリオ比較-自社に有利な技術分野は?

主要プレイヤーの技術分野別特許件数と直近5年の件数推移を比較した特許マップ

左側のグラフ(マトリックス)は、プレイヤー(出願人・特許権者)別に、技術分野(特許分類:FI、サブクラス)別の特許件数を表示したものです。

また、右側の吹き出しにあるグラフ(折れ線)は、技術分野毎の件数推移(ここでは直近5年分)を表示したものです(上から合計件数の多い・中くらい・少ない技術分野群に分けて表示)。

加えて、左側のグラフの上部には、右側のグラフから読み取った技術分野毎の増減傾向を矢印で示してあります。

これにより、各プレイヤーがどんな技術分野にどれくらい出願しているか、また、その技術分野は全体的に成長傾向か衰退傾向かを見て、その技術分野に注力することが自社に有利か否か、などを判断します。

なお、これは元データとしてJ-PlatPatのダウンロードデータを用い、本サイトのマップ生成アプリでグラフ化しています。

出願増加率&シェア比較-成長性や優位性はあるか?

主要3社の上位技術分野と特定技術分野の出願推移・企業シェアを比較した特許マップ

左側のグラフ(タイル)は、プレイヤー(出願人・特許権者)別に、特許件数(出願件数・公報件数)の多い技術分野(特許分類:IPC、上位10分野)を示したものです。本件では3社分を上下に並べています。

また、右側のグラフ(積上げバー)は、特定の技術分野について件数推移(ここでは直近20年分)を表示したもので、上のグラフはステータス別、下のグラフは各プレイヤーのシェアを、それぞれ色分けして表示しています。

これにより、各プレイヤーが注力している技術分野、その技術分野の全体的な件数規模や直近での伸び率を把握した上、特に自社のシェアを見ながら成長性や優位性を判断します。

なお、これは「The Lens」の機能を利用して作成しています。

被引用数vs出願数比較-注目度と注力度がズレは?

主要プレイヤーの被引用件数の推移と被引用件数・ファミリー件数の分布を比較した特許マップ

左側のグラフ(マトリックス)は、被引用件数の分布(被引用件数別の特許件数を円の大きさで表示)につき、経時変化(出願年・公開年)を表示したものです。ここでは、上側に当該分野の主要プレイヤー3社分、下側にその内の1社分を表示しています。

また、右側のグラフ(マトリックス)は、被引用件数とファミリー件数(同じ発明に関する外国出願や分割出願などの件数)の分布を表示したものです。ここでも、上側に当該分野の主要プレイヤー3社分、下側にその内の1社分を表示しています。

被引用件数は、その特許が後続の特許により引用された件数(正確には、その特許で拒絶や無効の理由を打たれた特許の件数)です。その発明に対する注目度を示すパラメータと言っても良く、いわば客観的な指標と言えます。

一方、ファミリー件数は、自らの判断で出願した件数であり、重要と思う発明ほど、多くの外国出願や分割出願をする傾向にあります。その発明に対する注力度を示すパラメータと言っても良く、いわば主観的な指標と言えます。

客観的な指標と主観的な指標のバランスを見ることで、注目度の高い特許がしっかり外国出願できているかなど、出願戦略の是非を判断するのに用います。

なお、これは「The Lens」の機能を利用して作成しています。

技術キーワードシェア比較-競争環境におけるキーテクノロジーは?

発明の名称と要約に出現する技術キーワードの頻度を主要3社のシェアで比較した積み上げ棒グラフ

このグラフ(積上げバー)は、技術キーワードの出現頻度を表したもので、プレイヤー(出願人・特許権者)別に色分けしたものです。

本件では、左側には「発明の名称」に出現する技術キーワード、右側には「要約」に出現する技術キーワードに関するグラフとなっています。

これにより、対象とする母集団の中で、頻出する技術キーワードにどんなものがあるかを見ると共に、その技術キーワードにおける自社のシェアを見ることで、自社に独自性ある技術キーワードを探るのに用います。

なお、これは元データとしてJ-PlatPatのダウンロードデータを用いて作成しています。現在は、本サイトの「VisiP☆Com」で、キーワードの切り出しからグラフ化まで一連で行えます。

技術分野トレンド比較-成長しそうな隣接分野は?

C10L関連特許に出現する技術分野別の特許件数を2016~2025年で示した時系列マトリックス

このグラフ(マトリックス)は、技術分野(特許分類:FI、サブクラス)別に、特許件数(出願件数・公報件数、円の大きさで表示)の推移を示したものです。

本件では、特定のプレイヤーが出願している特定の技術分野(ここではC10L)に着目し、その特許分類で母集団を取った上、そこに出現する技術分野(特許分類)別に、件数推移を表示しています。

これにより、隣接する技術分野を見ることで、成長しそうな隣接分野はどこか、他社はどのような出願をしているかを把握し、自社技術の応用可能性を探るのに用います。

なお、これは元データとしてJ-PlatPatのダウンロードデータを用い、本サイトのマップ生成アプリでグラフ化しています。

公開情報が少ない場合は?

競争優位性を判断するには、競合他社のターゲティングを適切に行うことが重要となります。

株式を上場している大企業や、中小でも歴史ある企業などの場合は、競合他社や市場動向を内部情報として把握しているでしょうし、特許情報やIR情報を含め、公開情報も豊富なので、競合他社のターゲティングについて困ることは余り無いかと思います。

一方、未成熟な新興技術分野、あまり特許を出さない傾向のある業界、非上場企業などの場合は、利用できる公開情報が少ないため、今回紹介したようなデータ分析が困難です。

そのような場合は別途、ウェブやSNS等にある公開情報を幅広く収集し、生成AIも利用しながら、様々な切り口で情報分析した上、ターゲティングにふさわしい競合他社を選別していく作業が必要となります。

そのような場合の方法については、ネットでも色々紹介されていますが、機会があれば別途取り上げたいと思います。

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました!

特許調査・分析について体系的に知りたい方へ

特許検索、データ取得、特許分類、Excelによる特許マップ、テキストマイニング、競争分析まで、実践的な方法をまとめています。

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ABOUT ME
江川 祐一郎
江川 祐一郎
「ゆめ知財」代表
「ゆめ知財」代表の江川 祐一郎と申します。弁理士、知財系コンサルタントであることに加えて、知財系ライター、知財系プログラマー、知財系プランナーとして活動中です。知財戦略支援、中小企業・スタートアップ支援、産学連携支援、地方創生支援などを通じて、様々な人々や組織を繋ぎながら、夢の広がる社会の創造に貢献したいと思っています。
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