特許分類には、IPC(国際特許分類)、CPC(共通特許分類)、FI(ファイルインデックス)、Fターム(ファイル形成ターム)などがあります。FIとFタームは日本国特許庁による独自の分類です。
この内、筆者は、Fタームを好んで使っています。Fタームは、コンピュータ検索の利便性を念頭に1987年に導入された、比較的新しい特許分類体系ですが、複数の技術的観点から非常にきめ細やかに分類されており、下手にIPCやキーワードを使うよりも、使い勝手が良いことが多いためです。
Fタームでは、FIで分類された約20万個に渡る技術項目を、約40個のテーマグループ、約2600個のテーマコードにまとめ直しています。
今回、このテーマコードを利用して、最近の特許動向を俯瞰してみたいと思います。対象とするのは、テーマコード:2B001「田植機の機枠」。「機枠」とは聞き慣れない言葉ですが、要するに「田植機」と考えて貰って良いかと思います。
対象とするのは、2019年以降に出願された特許及び実用新案です(J-PlatPatにて検索)。
出願件数ランキング
農業機械で有名な井関農機やクボタが上位です。ヤンマーは意外と出願していない様子です。(あくまでこのテーマコードに限り、という条件付きですが。)
出願件数推移
まだ出願が公開していない案件があるかと思われますが、2020年以前の出願分は全て公開されているはずなので(2022年7月現在)、最近出願しているのは、伊関農機、クボタ、三菱マヒンドラ農機に3社に限られるかと推察されます。
上位出願人の比較
出願件数が上位である井関農機とクボタについて、頻出するキーワード件数を相対比較したものです。算出、システム、記録媒体といった点で、クボタに特徴的なキーワードが存在することが分かります。
頻出キーワード
ユーザーローカル社のAIテキストマイニングを利用して、発明の名称における頻出キーワードをクラウド表示したものです。出現頻度の多いキーワードは大きく、一緒に登場する頻度の高いキーワードは近くに配置されています。
係り受け解析
出現したキーワードが、ポジティブな意味で用いられているか、それともネガティブか、AI(ディープラーニング)解析により判別したものです。感情表現解析とも呼ばれます。これにより、その技術分野にどのような技術課題があるか、予備的に概観することができます。
ここでは、田植えの作業効率、田植機に備えられたディスプレイの見易さ、などが技術課題として挙げられていることが推察されます。
ピックアップ:クボタ「作業機」
ここで、注目特許(筆者が好みでピックアップしただけですが)として、クボタの「作業機」を取り上げます。
要約は以下の通りで、障害物を検知しながら自動走行する田植え機の発明です。
図面が大量に添付されており、ディスプレイの例として、以下のような図があります。乗用車で採用されている自動運転機能を凌ぐ、高度な機能が搭載されているようです。
筆者も親戚の田植えを手伝ったとき、田植え機を運転させて貰ったことがありますが、なかなかに大変でした。このような自動運転機能がついていれば、楽しく作業できるかも知れませんね。
次回よりしばらく、Fタームのテーマコード毎に、最近数年間の特許動向を俯瞰してみたいと思います。