おもしろ特許~「永久機関」
いわゆる「永久機関」は、”絶対に特許にならない”テーマのひとつです。
永久機関は、エネルギーを与えなくても永久に仕事をし続ける、いわば”夢”の機械ですが、熱力学の法則により”不可能”だと証明されています。
実現が不可能な「永久機関」の発明は、当然ながら特許にはなりません。特許の審査では「自然法則を利用していない」という理由で拒絶されます。
それにも関わらず、「永久機関」に関する特許出願は後を絶ちません。”夢”を追いかける発明家が多いということですね。
ところが、「永久機関」について触れている特許で、登録されているものがいくつか存在します。どんなものか、見てみましょう。
「永久機関」について触れている特許
J-PlatPatで、「永久機関」が全文のどこかに記載され、かつ、登録されているものを検索すると、25件ヒットします。CSVでダウンロードしたものが下図です。
もっとも、これらの中身を確認してみると、1件を除いて、「永久機関」の発明ではありません。たいていは下図のように、永久機関を否定する記載になっています。
「永久機関」が登録になっているけど・・・?
では、”1件を除いて”の1件とは、どんなものでしょう?
それは「特許」でなく「実用新案」として登録されています。下図のように、はっきりと”永久機関”の発明(実用新案では「考案」と呼ぶ)だと書いてあります。
しかし、結論から言えば、この実用新案は無効です。
特許庁に登録されているからと言って、全ての権利が有効ではありません。それじゃ、なぜ登録されているのでしょう?
実は、実用新案は”審査無しで登録”になる、というのがカラクリです。
特許はしっかりと審査されますが、実用新案は特許と違って、簡単なアイデアに対して、審査を経ずにいち早く権利を与えることで、特に中小企業に便宜を図った制度と言えます。
簡単なアイデアは、製品にして販売しても寿命(ライフサイクル)が短いことが多いので、とり急ぎ登録にしておいて、商売のタイミングに遅れないようにしよう、ということです。
一方、そんな権利は無効だと、文句のある人も出てくるでしょうから、そういった場合は、文句のある人自身に後から特許庁に訴え出て貰う(「無効審判」と呼びます)、という仕組みになっています。
上述した実用新案も、審査経過を見れば分かりますが、特許庁では権利の有効性について判断していません。
つまり、やはり「永久機関」が特許として認められる訳ではない、ということです。
今後も、「永久機関」が特許や実用新案になることは無いと思いますが、相対性理論や量子もつれなど、物理法則の常識が破られることがあるのも事実。いつの日か、何か全く新たな原理で「永久機関」が実現される時代が来るかも?(来ないだろうなあ・・・)