おもしろ特許~「超能力」
今回は、「超能力」に関する特許を見てみましょう。
何をもって「超能力」と呼ぶか、多少は議論の余地があるかと思いますが、特許的には通常、実現不可能と判断され、特許権を取ることができない発明です。
しかし、実際には、「超能力」に関係する特許は、意外とたくさん出されています。
「超能力」を権利として主張している特許
下図は、「超能力」を権利として主張(つまり「請求の範囲」、いわゆる「クレーム」に記載)している特許のリストです。「瞬間移動」の特許に関する記事でもご紹介したように、多くは仮想現実やゲームに関するものです。
「超能力」が特許にならない理由
しかし、上記の特許リストには、ゲームなどではなく、ほんとうに”超能力そのもの”を権利主張している案件があります(どの案件かは探してみてください)。かなり難解な内容ですが、要約すると以下の通りかと思われます。
- 超能力で会話する方法
- 心の中で考えていることを遠隔等の見えない相手に伝える方法
- 相手の体を動かす方法
- 空中に映像を映し出す方法
- 翻訳することなく世界中の人々と会話する方法
- 小さな腫瘍を念力で治す方法
- 20年以内に死亡した人と会話する方法
- 幽体離脱して再び元の身体に戻る方法
この案件は、拒絶の判断がなされて特許にはなっていません。特許にならない理由は種々ありますが、主な理由を挙げると以下の通りです。
- どうやったら実現できるか具体的な手段の記載が無い(特許法36条4項1号、いわゆる「実施可能要件」違反)→単なる願望が書かれている状態と言えます。
- 何の特許が欲しいのか明確では無い(特許法36条6項2号、いわゆる「明確性要件」違反)→上記した要約は筆者ができるだけ明確になるよう心掛けましたが、原文はかなり難解な言い回しが多いです。
- 自然法則を利用した技術的思想の創作では無い(特許法29条1項柱書、いわゆる「発明要件」または「産業上の利用可能性要件」違反)→科学的に原理が立証されない、自然の摂理に反するものは「発明」ではないという判断。いわば”門前払い”です。
特許庁はどのように対応したか?
この案件に対して、特許庁が実際にどんな対応をしたかは、J-PlatPatで記録を閲覧できます。
検索結果一覧から、見たい特許へのリンクをクリックすると、右上に「経過情報」というボタンが現れるので、これをクリックします。
次に、「経過記録」タブをクリックすると、審査記録がリスト表示されます。ここで、この特許の審査に関する書類を、ほぼ全て閲覧することができます。
ここに、「応対記録」というのが4件あります。通常、特許庁とのやり取りは書面だけで行われますが、ときには電話・FAX・面談など、他の手段でも応対してます。その際のやりとりがこの「応対記録」として残されます。
本件の場合、発明者が特許に慣れていなかったようで、特許庁は最初、特許制度の趣旨から相談すべき窓口まで、かなり丁寧に説明したようです。
ところが発明者は、それで特許が認められたと思い込んだようで、結果的に拒絶された後、何度も特許庁に掛け合った模様です。応対記録を見ると、そのやり取りの状況を窺うことができます。
別に特許庁の肩を持つ訳ではありませんが、誰に対しても丁寧に対応しようという姿勢を垣間見ることができますね。