特許で「将来予測」はできる?「出願件数の変化」を読み解く

特許情報から「将来予測」なんて、ホントにできるの?
「できる」と信じてIPランドスケープに勤しむ人、「できない」と冷ややかに見る人、わりと見解が分かれるのでは?
一方、「将来予測」までは行かないが、トレンドを読む「ヒント」は幾つかあります。例えば、出願件数の傾向、被引用の時期、登録の時期・・・、などなど。
今回は、出願件数の傾向を読み解く方法について解説します。
急増したマスクの特許出願
いわゆる”コロナ禍”に入る2019年から2020年頃、マスクの品切れが続出しました。マスクの手作りも盛んに行われ、多種多様な機能やデザインのマスクが、次々と世に出されました。
この間、マスクに関する特許出願も、盛んに行われております。そのトレンドは下図の通り。横軸は1ヶ月単位です。
日本における”コロナ騒ぎ”が本格化したのは2020年1月、最初の緊急事態宣言が出されたのは同年4月。一方、特許出願の急増は、すでに2月から始まっています。世間の動きに敏感で、すぐに行動を起こした人が、数10人は居たことが分かりますね。
しかし、それが収まるのも早く、緊急事態宣言が出た4月には早くも頭打ち、その後は減少に転じています。”一過性の特許ブーム”とも言える状況だったことが分かります。
一方、2021年以降は、また若干増えたりしています。本当の理由は分かりませんが、最初のブームが落ち着いた後、着実な開発が徐々に始まる、というのは良くある話です。
特許情報では、急増するトレンドを捉えられない!
しかし、こうした急増のトレンドを見るのに、特許情報はあまり馴染みません。なぜなら、特許が公開されるのは出願から1年半後だからです。(今回、早期に公開や登録になった案件もあるようですが、少数派で例外と言えます。)
実は、上記のグラフは、この記事を書いた時点(2022年6月)のもので、特許公開されるより前(2020年12月以前)の情報しか信頼できません。
今回のコロナ禍の場合、早くとも2021年6月以降でないと、正確なトレンドは分からないのですが、その頃には「時すでに遅し」、という訳です。
以上から、特許情報で見えるトレンドは、「後付け」の説明になり勝ちです。少なくとも短期トレンドには馴染まず、数年単位の長期トレンドを見る、と割り切った方が良さそうです。
”バズワード”の特許検索にご注意を!
ちなみに、上記のデータは、下図の通りGoogle Patentsで取得しました。
ただし、単に「マスク」で検索すると、半導体露光用のマスクも引っかかってきます。今回は「衛生」「ウィルス」「抗菌」などのキーワードで絞り込んでいます。
このように、急増するワード、いわゆる”バズワード”を調べる場合、思わぬノイズが紛れ込むことがあるので、くれぐれもご注意くださいね。