「切り餅」事件とオープン&クローズ戦略(2)~”三方よし”の「切り餅ランド」構想
「切り餅」事件を例にした、「オープン&クローズ戦略」の続きです。改めて、「自社よし」「顧客よし」「競合よし」の”三方よし”で、「世間よし」を共創するには?ということを考察してみたいと思います。
いろんなお餅を選びたい!
「買い手」にとっては、「売り手」同士の競争というのは、基本的には良いことです。
競争によって安くなるというメリットもありますが、各社が「他社には提供できない価値」を提供しようと競うことで、「選択の幅が広がる」というメリットが、実は大きいかと思われます。
言い換えれば、前回の記事で以下のように言及した通り、各社の魅力をお互いに競った結果、顧客への提供価値が増大する、ということになります。
- 「商品の魅力」について、自社・他社で共に考え、オープンな仕掛けを協創で構築し、顧客への提供価値を協創で増大させる
- 「各社の魅力」について、各社で個々に考え、クローズな仕掛けを各社で構築した上で、顧客への提供価値を競争(切磋琢磨)で増大させる
いろんなお餅を創れたら?~「切り餅ランド」構想
以上のことを、「切り餅」に照らして言えば、「越後の切り餅も、サトウの切り餅も、どちらも選べる」ということですね。お餅が好きな筆者としては、とても嬉しい状況です。
そこで、さらに踏み込んで、より前向きなビジネスを考えてみてはどうでしょう?
例えば、自社・競合・顧客がみんなが集まって、各々の強みやアイデアを出し合いながら、好みのお餅を出す場を提供する、いわば「切り餅ランド」とも言える構想があり得るかも知れません。
お餅を製造するノウハウは、ライバル同士が手を取り合って、顧客にアドバイスする。キッチンや調理器具も提供する。顧客は手ぶらで「切り餅ランド」に来場するだけで良い。そのようなビジネスモデルの提案、いわば新たな”コトづくり”です。
これは突拍子もないアイデアでもなく、例えば、新横浜ラーメン博物館などは、ひとつの施設に複数のラーメン屋が入居して、各店舗が独自のラーメンを提供しつつ、ラーメン作り体験や、ラーメンの歴史などについて学習できるといった、ライバル同士の協創空間が実現しています。
また、日清食品のカップヌードルミュージアムなども、一社提供ではありますが、顧客が好みのカップラーメンを作れるサービスを行ったりしています。
お餅ならば、同様なことは可能と思われます。もっと踏めば、お餅の新商品アイデアを募るコンペティションのイベントを開催して、顧客・競合・自社を問わず、良いアイデアには表彰、商品化は共同で行うなど、新商品開発に対しても、前向きな施策がいろいろ考えられるかと思います。
基本的な知財(バックグラウンドIP)は各々が前もって確保しておく前提ですが、「切り餅ランド」から生まれた新たな知財(フォアグラウンドIP)は、全てオープンにするのもありかと考えます。
そのようなことになれば、思いも寄らないお餅の新たな市場が開けるかも。お餅が好きな人ならば、ワクワクしませんか?