研究開発の落とし穴(2)~競合と代替を見ているか?
前回の記事で「技術的な差別化への過信」という話をしましたが、もう少し視点を広げると、「自社商品のライバルはいったい誰なのか?」という問題があるかと思います。
性能や品質は劣るが安価な「競合商品」
前回の記事では、自社商品よりも性能や品質は劣るが安価なものを、「競合商品」として挙げています。(下図にその部分を抜粋)
メーカーの技術者は、往々にして「性能や品質が高いから売れる」と思い勝ちですが、現実には「安価だから売れる」という方が正しい場合も多々あります。
身近な例では、高い国産のピーナッツと安い輸入のピーナッツ、高い無線イヤホンと安い有線イヤホン、高級すし店と回転すし店など、同じカテゴリの商品でも性能や品質だけでなく価格に違いがある場合、安い方を買うことの方が多くはないでしょうか?
これは、「売り手」と「買い手」、どちらの視点に立つのか?という話です。普段は「買い手」であるはずの消費者が、会社員としては「売り手」の視点になってしまい、ついつい「売れない技術開発」をやってしまう、ということが起き勝ちです。
「安ければ良い」と言いたい訳ではなく、性能も価格も含めて、良し悪しを決めるのは「買い手」であることを、決して忘れてはならないということです。
異なる技術で問題解決する「代替商品」
一方、上図の例では、不純物を除去するために、フィルターによる”ろ過”ではなく、シートによる”吸着”という、異なる原理で問題解決する商品が「代替商品」として挙げられています。
自社品のライバルが無いか、特許をチェックする際、フィルターの特許だけを見て、シートの特許は除外したりしてはいないでしょうか?
そのようなチェックをすると、「フィルターで該当する特許はないからOK」という、誤った判断をしてしまうことになります。
そして、フィルターよりシートの方が良く売れることに、商売を始めてから気づいたりすると、目も当てられないことになります。
どうすれば良かったのか?ひとつには、異なる原理を使う「代替商品」の存在に、常に注意を払うべき、ということです。
そして、注目すべきポイントが、フィルターかシートかという商品のカテゴリではなく、不純物を除去するための技術的な原理の方である、ということです。
加えて、フィルターよりシートの方が売れた理由は、「フィルターは面倒、シートが手軽」「フィルターには特定の機器が必要、シートは汎用の機器でOK」という理由かも知れません。
そうなると、技術自慢の自社商品が、実は性能で負けていた、ということになります。
「買い手」の視点で研究開発しているか?
競合商品と代替商品のいずれにも共通することは、「買い手」の立場に立っているか、ということだと思います。
「買い手」の視点で研究開発しているか?「買い手」の視点で特許を見ているか?
研究開発をするに当たって、このことは、常に心に留めておきたいところですね。