ブランド力の捉え方・活かし方とは?
以前、「IPランドスケープを上手く推進するには?」という記事で、「市場成長性」と「競争優位性」について触れました。
一方、そのようなことを分析する前に、そもそもの話として、以下を考えておく必要があります。
- なぜその市場を選んだのか?
- それは自社にとって適当な選択か?
それらを考えるに当たって、自社のブランド力がどのくらいか?は、重要なポイントになります。
社会的意義・社会的価値・ビジネスモデル
政府の知的財産戦略本部が推進する「経営デザインシート」に関連して、ビジネス図解研究所が公表している「経営デザインシートの 中核をなす ビジネスモデルを 図解で考える」では、以下の図が紹介されています。
- 知的財産戦略本部「経営デザインシート」
- ビジネス図解研究所「経営デザインシートの 中核をなす ビジネスモデルを 図解で考える」
ごく簡単に要約すれば、そもそもビジネスモデルを考えるには、社会性・経済合理性・創造性が必要、ということです。
一方、筆者は創造性をもう少し広く自社の「社会的価値」と捉えています。言い換えれば、自社が創造性を発揮でき、かつ、社会的価値が認知される、つまり社会的に期待されるか、ということになります。
そして、社会性はより具体的に「社会的意義」とし、経済合理性を発揮する手段を「ビジネスモデル」として、これら3つを満たす市場成長性や競争優位性を提示することが、IPランドスケープの役割と考えています。
この社会的価値は「ブランド力」とも言えます。そのようなブランド力を発揮できることが、有利なビジネスモデルに必要な条件とも考えます。
ブランド力はなぜ重要性か?
ベンチャー企業の方々と話をしていると、創造性や技術力をアピールすることが多いのですが、現実の商売においては、自社の売り込みに苦労しているケースが多いと感じます。言い換えれば、社会的価値の認知が弱く、社会的な期待に至っていない、とも言えます。
一方、大手メーカーや老舗企業の場合、創造性に乏しくても、規模や歴史がモノを言って、「この会社なら安心」といった、社会的価値の認知が完了している場合が多いかと思われます。
そうしたことが、特に新規事業においては、中小・ベンチャーと大手・老舗とのブランド力の差として、厳然と存在していると考えます。
創造性や技術力が優れていても、「すごいですね、じゃあ取引しましょう」とはなりません。ブランド力が無ければ先には進まない、それが厳しい現実かと思われます。
筆者の勤務していた会社は、天然資源を使った事業で歴史ある老舗なので、それを理由にお声を掛けていただくことが多々あります。「天然資源なら○○社さんですよね」といった反応です。
一方、当の従業員は、意外とその価値に気付かないものかと思われます。日本人特有の謙遜なのかも知れませんが、自社に対する”中の人による評価”は、低いことが多いような気もします。
しかしながら、社会的価値は”外の人が評価”するものです。もしそうしたブランド力がすでにあるならば、それを利用しない手はない、と考えます。
「技術力×ブランド力」が競争優位性へ導く
IPランドスケープでは、自社の技術力だけを競争優位性と捉えがちですが、もう少し視野を広げて、自社のブランド力という切り口を、より重視すべきかと思います。
例えば、「天然素材ひと筋の老舗」といったブランド力があるならば、それを積極的に生かして、例えば、その天然素材に関するサプライチェーンを川上から川下まで見渡して、新たな事業領域を切り開く潜在力が備わっているかも知れません。
別の視点からは、仮に技術力だけあってブランド力が低い場合でも、ブランド力ある大手や老舗と手を組んで、新たな事業領域を切り開くのに利用する、といった手も考えらえます。(実際、中小・ベンチャーにはそうした行動が多そうです。)
もっとも、そもそもブランド力をどうやって測り、どのようにIPランドスケープに取り込むのか、という課題はあるかと思われます。筆者に答えは未だありませんが、少なくともブランド力への意識は欠かすべきではない、と考える次第です。