特許データの無料ダウンロード徹底比較!~J-PlatPat、Google Patents、PATENT SCOPE、Espacenet、The Lens
無料の特許検索サイトが昨今、有料サービスに劣らない進化を遂げつつあります。特許データの無料ダウンロード機能も、質と量ともに、徐々に充実してきています。
そうした特許データを使って、特許マップ作成を行う機会も多いかと思います。
今回、特許データを無料ダウンロードできるサイトの内、J-PlatPat、Google Patents、PATENT SCOPE、Espacenet、The Lensといった代表的な5つのサイトを取り上げて、徹底比較したいと思います。
各サイトの比較一覧
上記の各サイトについて、主にダウンロード機能に着目した比較結果を、下表に示します。(2025年5月現在の状況)
この結果を踏まえて、以下、各サイトの特徴について、詳しく見て行きたいと思います。
各サイトに共通する主な機能
日本語への対応
J-PlatPatはもちろん、いずれのサイトも日本語で表示可能です。
Google Patentはブラウザの機械翻訳を使う必要があります。一方、PATENT SCOPE、Espacenet、Lensでは、日本語メニューが用意されています。いずれも日本語がちょっと不自然ではありますが、実用上は特に問題ないと言えます。
ただし、日本語による検索が可能か否かは、また別問題です。結論として、Espacenetを除いて、日本語による検索が可能です。詳しくは後ほど解説します。
ダウンロードできるファイル形式
いずれのサイトも、検索結果をCSVやXLSなどのファイル形式でダウンロードでき、個々の特許をPDFでダウンロードすることも可能です。いずれも無料です。
ただし、日本語が文字化けするケースが時々あります。例えば、Google PatentsやThe Lensでは、CSV形式でダウンロードすると、文字化けしやすい傾向があります。
その場合、XLS形式やXLSX形式でダウンロードするのが無難です。
ちなみに、文字化けしたCSVファイルも、メモ帳で開けば正常に表示され、「UTF-8(BOM付き)」で保存し直せば、文字化けは解消されます。

出願関連書類へのアクセス
いずれのサイトも、グローバル・ドシエ(Global Dossier)というサイトへのリンクが貼られており、拒絶理由通知や意見書・補正書など、各国特許庁とやり取りされる書類を、無料で閲覧またはダウンロードすることができます。
グローバル・ドシエについては、特許庁サイトの解説などを参照ください。
サイト毎に異なる機能・特徴
特許番号
特許には数種類の番号が振られていますが、各サイトでダウンロードできる番号は、それぞれ異なります。
個々の特許を示す番号としては公開番号(国際公開番号や国内公表番号を含む)が良く使われますが、特許マップの作成では出願番号も良く使われます。その他、登録番号や優先番号(優先権主張番号)があります。
ちなみに、特許が公開される際には公開番号が付与されますが、登録されると別途、登録番号が付与されて新たに公開されます。つまり、ひとつの特許が公開時と登録時の2回、公開される場合があります。Google Patentsでは登録番号が優先表示されるようです。
日付
日付の種類も複数あり、出願日は各サイト共通ですが、その他、公開日(国際公開日を含む)、登録日、優先日(優先権主張日)があります。
J-PlatPatでは公知日(発行日)、Espacenetでは公報発行日が採用されており、いずれも、公開日や登録日に相当すると考えて、実用上で大きな問題はありません。
ちなみに、厳密に言えば、例えば登録日と登録公報発行日は、微妙に異なります。登録日は、特許査定後に特許料が払い込まれ、特許庁内でその旨の事務処理がされた日を指しますが、その公報発行日は、それより若干遅れます。
出願人・発明者
各サイトとも、出願人をダウンロードできるのは共通で、Google Patents、Espacenet、The Lensでは、発明者もダウンロード可能です。
J-PlatPatでは、出願人または権利者となっています。これは、特許が登録になった後、出願人は権利者(その特許権を所有する者)と呼ぶのが正確なので、それに配慮した表記と思われます。
PATENT SCOPEでは、出願人が英文と和文で併記されていることがあります。例えば、「TOYOTA MOTOR CORP; トヨタ自動車株式会社」などです。これは、親切なようにも見えますが、特許マップ作成や統計解析などの場面では、却って不便になる場合があります。
ちなみに、出願人と権利者が異なることは割とよくあります。これは、会社が吸収・合併されたり、その権利が売買されたりして、名義が変わることがあるためです。
また、出願人は企業や大学などの組織、発明者はそこに所属する個人というパターンが多いですが、個人事業主や中小企業・ベンチャー企業の場合、出願人も発明者も個人(創業時の社長など)という場合も少なからずあります。
テキスト項目(発明の名称、要約)
テキストで表示される項目として、いずれのサイトでも発明の名称(タイトル)がダウンロード可能で、J-PlatPat、PATENT SCOPE、The Lensでは要約のダウンロードも可能です。
いずれのサイトも、請求の範囲(クレーム)や全文など、発明の名称や要約以外のテキスト項目について、検索すること自体は可能ですが、ダウンロードは不可となっています。これが無料サービスの限界で、有料サービスでは、少なくとも請求の範囲はダウンロードできるケースが多いかと思います。
なお、ダウンロードされる要約データには、時折、ブラウザで使用されるHTMLなどに由来する制御文字(<p>やnullなど)が残ってしまっていることがありますが、サイト更新などで徐々に解消される傾向にあります。
特許分類
Google Patentsを除いて、IPC(International Patent Classification国際特許分類)、CPC(Cooperative Patent Classification、共同特許分類)、FI(File Index)のいずれかがダウンロード可能です。
IPCは、WIPO(世界知的所有権機関)が管理する特許分類であり、1968年から運用が始まり、今では世界各国の特許に付与されており、国際的に共通で使用されている、歴史ある特許分類です。
CPCは、欧州特許庁と米国特許商標庁が共同で策定している、比較的新しい特許分類です。IPCの分類が古くなってきたことから、その改良版として提案された分類で、2013年から運用が開始されていますが、欧州や米国の特許を除いて、未だ全ての特許に付与されるには至っていません。
FIは、日本の特許庁がIPCに基づいて編成している、日本独自の特許分類であり、J-PlatPatだけがデータを搭載しています。日本の技術に合うよう、独自の詳細分類が付与されていますが、特許マップ作成など、マクロな観点からデータ処理する際には、IPCとほぼ同じと考えても、実用上はほぼ問題ありません。
その他のダウンロード項目
Espacenetを除いて、個々の特許文献へのリンク(URL)がダウンロードされます。Espacenetでも、検索結果の画面から個々の特許文献へのアクセスが可能です。
J-PlatPatとThe Lensでは、審査中や登録など、個々の特許の審査状況(ステータス)がダウンロード可能です。
The Lensでは、引用文献、被引用文献、ファミリー特許に関する情報を細かくダウンロードできるのが特徴です。Espacenetでも引用文献と被引用文献のダウンロード項目が存在しますが、データは余り入っていないようです。
収録されている国数
J-PlatPatは、日本の特許情報が主軸になっており、収録国数は11ヶ国と少なめです。ただし、いわゆる五大国(米国、欧州、中国、韓国、日本)をはじめ、主要国の特許情報を収載しており、収録件数そのものは世界の特許の9割以上を網羅していると思われます。
国際特許協力条約(PCT、Patent Cooperation Treaty)に加盟する国数は158ヶ国(2025年5月現在)ですが、収録されている国数が最も多いのは、Google PatentsとThe Lensによる106ヶ国です。
どの国を収録するかの選定基準は不明ですが、検索やダウンロードに耐えるレベル、と考えられるデータ内容を提供している国(特許庁)を、各サイトが独自の基準で選定していると推察されます。
ダウンロードできる件数
一度にダウンロードできる件数は、Google Patents、PATENT SCOPE、The Lensでは1万件以上と、実用に十分な件数をダウンロード可能です。
J-PlatPatは上限3000件、要約をダウンロードする場合は上限500件という制約があります。色々と便利な機能を持つJ-PlatPatですが、この点は他サイトに比べて少々劣ります。
Espacenetでは、検索結果の画面に表示される上限である25件が、一度にダウンロードできる最大件数であり、また、検索画面毎にしかダウンロードできません。これは、他サイトと比較しても、残念ながら実用に耐えるレベルにはないと言えます。
日本語への対応
日本語での検索やダウンロードについて、J-PlatPatとGoogle Patentsでは、標準で対応可能です。
PATENT SCOPEとThe Lensでは、言語を日本語に設定することで、日本語での検索とダウンロードに対応します。詳細な手順は後述します。
なお、Espacenetは、残念ながら日本語での検索やダウンロードに対応しておらず、英語・フランス語・ドイツ語での対応となります。
ダウンロードできるファイル形式
いずれのサイトも、ExcelやGoogleスプレッドシートで利用可能な、CSV、XLS、XLSXといったファイル形式のいずれかでダウンロードできます。
Google PatentsやThe Lensでは、その他のファイル形式も採用していますが、通常の特許マップ作成などの場面では、利用する機会はなさそうです。
ログインの要否
いずれのサイトも、検索自体はログインしなくても可能ですが、J-PlatPat、PATENT SCOPE、The Lensについては、ダウンロード時にログインが必要です。
ログインには会員登録が必要となりますが、いずれのサイトも無料で登録可能です。ログインの手順については後述します。
有料か無料か
いずれのサイトも、検索とダウンロードともに、原則は無料です。
ただし、The Lensについては、個人利用は無料ですが、商用利用の場合には所定の費用を支払う必要があります。
J-PlatPatの検索・ダウンロード手順
以下、各サイト別に、検索からダウンロードまでの手順を紹介します。
各サイトとも、以下の検索条件を例に挙げます。ただし、サイトによっては全ての条件を網羅できないため、できるだけ近い条件を採用することにします。詳細は各サイトの説明にて述べます。
- 発明の名称(タイトル):自動運転
- 期間(公開日):2020年1月1日~2024年12月31日
- 国(管轄官庁):日本
- 言語:日本語
まずは、J-PlatPatにおける手順です。
検索画面
和文と国内文献にチェック、「発明・考案の名称/タイトル」欄に「自動運転」、「公知日/発行日」の欄に所定の日付(yyyymmdd形式)を入力して、「検索」ボタンをクリックします。
検索結果とダウンロード操作
検索結果一覧に「CSV出力」ボタンが表示されるので、クリックします。
ログイン画面
ダウンロード時にログインが求められます。利用申請した上、発行されたユーザIDとパスワードでログインします。
要約をダウンロードしたい場合、検索結果が500件以下の場合に限り、「要約を出力する」にチェックを入れてダウンロード可能です。500件を超える場合、下図のように薄字になってチェックできなくなります。
ダウンロード結果
画面右下に「CSVダウンロード」ボタンが表示されたら、クリックすることで、下図のような表がCSV形式でダウンロードされます。
Google Patentsの検索・ダウンロード手順
画面構成
Google Patentsの画面構成は、他サイトと比べて最もシンプルで、一覧性が良いと言えます。
左エリアに縦長の検索画面、右エリアに検索結果、右上にダウンロードボタン、という構成が基本です。上部にはコマンド入力でも検索できる検索バーもあります。
検索条件を入力すれば、検索ボタンをクリックしなくても、即時に検索結果が表示されます。
検索画面
発明の名称(タイトル)は「Search terms」欄に「TI=(自動運転)」と入力、期間は公開(Publication)を選択した上でyyyy-mm-dd形式で入力、管轄官庁(Patent Office)は「JP」、言語(Language)は「Japanese」を選択します。
なお、Search termsについは、検索欄の右側アイコンをクリックすると、下図のような詳細な検索画面が現れるので、コマンドを覚えなくとも、これに従って入力も可能です。

上部の検索バーには、下図のように、入力した検索条件が自動的にコマンド表示されます。
ダウンロード操作
画面右上のダウンロード(Download)をクリックすれば、数種類のファイル形式が表示されます。日本語の文字化けを避けるには、XLSX形式でダウンロードするのが無難です。
ダウンロード結果
選択したファイル形式に従って、下図のようなファイルがダウンロードされます。
1行目には検索条件が表示されるのですが、残念ながら日本語では正しく表示してくれないようです。その他のデータ項目は正常に日本語表記されます。
PATENT SCOPEの検索・ダウンロード手順
初期画面
PATENT SCOPEで特許データをダウンロードするには、先にログインしておく必要があります。なお、日本語表記もこの初期画面で選択できます。
ログイン画面
アカウントを作成した上、発行されたユーザ名とパスワードでログインします。
検索の種類選択
画面右上の「検索」をクリックして、「構造化検索」を選択します。コマンドを使える方ならば、「詳細検索」でもOKです。
検索画面
「発明の名称(日本語)」フィールドに「自動運転」、「公開日」フィールドに期間(dd.mm.yyyy形式)を入力、「官庁」は「日本国」、「言語」は「日本語」を選択して、「検索」ボタンをクリックします。
検索結果とダウンロード操作
検索結果が表示されたら、「ダウンロード」をクリックして、ヒットした件数に応じて、100件または10,000件を選択します。
ちなみに、上部バーには、入力した検索式がコマンド形式で自動表示されます。
ダウンロード結果
結果は、XLS形式で下図のようなデータとしてダウンロードされます。
上部には、検索条件や検索日が表記され、後で見直すのに便利です。
なお、出願人(Applicant)については、英語と日本語が併記される場合が多いようです。日本国内のみに出願したものは日本語のみ、PCTをはじめ外国にも出願したものは英語が併記されるようです。
Espacenetの検索・ダウンロード手順
検索の種類選択
Espacenetを日本語表記にした上、初期画面の左側エリアにて、「高度の検索」を選択します。
検索画面
Espacenetでは日本語入力を受け付けないので、タイトル(名称でのキーワード)には「自動運転」の代わりに、「auto* and driv*」と入力します。
公報発行日は、yyyy-mm-dd形式で入力、管轄官庁や言語は選択できないので、代わりに日本の公報を選択すべく、公報番号の頭2桁に「JP」と入力します。
検索結果とダウンロード操作
検索結果は25件ずつ表示され、画面右側の数値を順次クリックすることで、26件目以降が25件ずつ表示される仕様となっています。
そのダウンロードも、表示された画面毎に、25件ずつダウンロードする仕様です。ファイル形式はCSVとXLSを選択できます。
ダウンロード結果
結果は下図のようにダウンロードされます。上部にヒット件数と検索条件が表示されます。
The Lensの検索・ダウンロード手順
The Lensは、特許だけでなく、科学技術に関する論文も併せて提供しています。
実は、J-PlatPatやPATENT SCOPEにも、いわゆる非特許文献として論文が収載されており、Googleでも別途、Google Scalorという論文検索サービスがあります。
ここでは、そうした非特許文献に関する説明は省略し、特許に関する機能に限って紹介します。
初期画面
The Lensでは、特許データのダウンロードに当たって、先にログインが必要です。
初期画面にてログインした後、日本語表記を選択し、特許タブと構造化検索を順次クリックします。
ログイン画面
アカウントを作成し、発行されたユーザー名やパスワードでサインインします。
検索画面
画面中央から下部に検索画面が現れるので、「Title」フィールドに「自動運転」と入力、日付範囲に「公開」をチェックした上で日付(yyyy-mm-dd形式)で入力、「国・管轄庁」は「日本」をチェック、「クエリ言語」は「日本語」を選択して、「検索」ボタンをクリックします。
検索結果
検索画面が消えて、代わりに検索結果が表示されます。
左側エリアには、選択した日付範囲、国・管轄庁、クエリ言語などの検索条件が表示され、タイトルなどその他の検索条件は画面右上の「検索の編集」で確認・修正できます。
ダウンロード操作
画面右側の「ツール」から「エクスポート」を選択します。
ダウンロード画面
エクスポート画面が表示されるので、ダウンロードするドキュメントの数、ファイル形式、ダウンロードするフィールドなどを選択した上、「エクスポート」ボタンをクリックします。
ダウンロード結果
結果は、下図のような書式でダウンロードされます。
まとめ
以上のような無料検索サイトは、各国特許庁やWIPOのような公的な機関、または、情報提供を専門とするGoogleのような大手企業でないと、維持や運営が難しいかも知れません。
しかし、Lens.orgのように、NPO的な機関による運営するケースも出現しており、情報技術の進展に伴って、さらに多くの機関が参入することが期待されます。
以上、今回は、J-PlatPat、Google Patents、PATENT SCOPE、Espacenet、The Lensについて、主として検索結果のダウンロード機能に着目して徹底比較しました。
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