ビジネスモデル特許

ビジネスモデル特許の事例(7)伝票承認システム

ビジネスモデル特許審査基準を読み込む(筆者個人的な)チャレンジの7回目。

前回と同じく、コンピュータソフトウェア関連の「附属書B」から「ビジネス分野」と記載ある事例をピックアップ。

今回は、「〔事例 3-2〕 伝票承認システム 」(p.119)を取り上げます。

前回までは「発明に該当するか否か」に関する判断基準について見てきましたが、今回は「特許になるか否か」、つまり「進歩性があるか否か」です。

 

本件の概要

発明の名称は「伝票人承認システム」。部下が請求書への支払いを上司に承認して貰うという、よくある業務に関するものです。

このシステムを使った方法そのものはビジネスモデルと言えるか微妙ですが、いちおう、需要者(便益を受ける者=部下と上司)と供給者(便益を与える者=クライアントサーバシステムを運営する者)を認識することはできます。

しかしながら今回は、そこに着目するのでなく、「伝票処理をシステム化することが特許になるか否か?」に絞って、その判断基準を見てみたいと思います。

発明に該当するか?

まず、本件を以下のように図解。理解し易いように、事例をかなり省略・改変・単純化しております。

この事例は「発明に該当する」という前提です。手順や情報のやり取りが単純なこともあって、「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を利用して具体的実現されている」という要件を満たす点、割と分りやすいケースかと思われます。

進歩性はあるか?

次に、「進歩性があるか否か?」を判断する要件を、これも非常に単純化して列挙すると以下のようになります。

課題に特徴あるか?

世の中に無い斬新な課題を掲げた場合、その解決手段も提示困難でしょうから、それだけで特許性(進歩性)が高まる場合があります。

たとえば、1985年に公開された映画「バックトゥザフューチャー」では、すでにタブレット端末が描かれていましたが、それの実現と言えるiPhoneの発売は2007年、iPadは2010年。1985年時点では特許にならない(実現不可能な)ほど斬新だったと言えます。

本件では、伝票処理をコンピュータに置き換えることは、一般的な課題であるため、それだけでは進歩性なし、ということです。

情報処理に特徴あるか?

単純にコンピュータに置き換えるのは一般的だとしても、そのコンピュータによる情報処理自体に、世の中に無い斬新な方法論や技術が含まれていれば、それが進歩性として認められる場合があります。

本件では、ソフトウェア業界の技術者なら誰でも思いつくレベルの、一般的な情報処理として、進歩性を否定されています。

装置構成に特徴あるか?

利用するコンピュータの装置構成や配置等に、世の中に無い斬新な方法論や技術が含まれていれば、それが進歩性ありとされる場合があります。

今では当たり前ですが、先にも紹介した無人走行車の配車において、スマホ・サーバ・センサ・無人走行車等を選択して組み合わせること自体、世の中に無くて思いつかない時代であれば、進歩性を認められる要素になったかと推察します。

本件では、パソコンとサーバの組み合わせは、情報処理やハードウェア業界の技術者なら誰でも思いつくレベルの、一般的な装置構成として、進歩性を否定されています。

発揮された創作能力高度なものか?

よく「ゼロからイチを生み出す」と言われますが、実際には、すでに世の中に存在する技術の応用だったり組み合わせであることの方が多いと思います。

しかし、その応用や組み合わせ自体、そう簡単に思いつかないものだったり、いわゆる”コロンブスの卵”だったりすると、それは通常レベルを超えた高度創作能力の発揮だということで、進歩性を認められる場合があります。

本件では、作業手順をソフトウェアに「単なる置き換え」をしただけで、通常の創作能力の発揮だとして、進歩性を否定されています。

得られた効果顕著なものか?

すでにある技術の単なる組み合わせや置き換えだったとしても、それによって”思わぬ効果”が得られることが、ままあります。

例えば化学分野では、ある物質とある物質を混ぜても、予想通りの反応や機能が出ないことの方が多いものです(予想通りなら特許にならないとも言えますが・・・)。しかし、それが予想をはるかに超える結果だったり、予想とは全く異なる結果の場合、それが進歩性を認める要素になる場合があります。

ノーベル化学賞の田中耕一氏によるタンパク質の質量分析法は、いろいろな試薬を混合していて、むしろ失敗と予想された組み合わせで成功した例ですし、ポストイットなども、目標とした強い接着力を得られない技術構成が、「剝がすのが容易」という予想外の効果が得られたという事例です。

本件では、作業手順をコンピュータ化したことによる作業効率は、予想された当然の結果だとして、進歩性を否定されています。

ビジネスモデル特許というと、人による作業手順を単純にコンピュータに置き換えることが提案され勝ちですが、以上で見たように、進歩性をひとつひとつ意識して提案するように心掛けたいと思う次第です。

お読みいただきまして、誠にありがとうございました!

 

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