ビジネスモデル特許の審査基準を読み込む(筆者個人的な)チャレンジの6回目。
前回と同じく、コンピュータソフトウェア関連の「附属書B」から「ビジネス分野」と記載ある事例をピックアップ。
今回は、「〔事例 2-10〕 無人走行車の配車システム及び配車方法2 」(p.79)を取り上げます。
本件の概要
発明の名称は「無人走行車の配車システム及び配車方法」。
概要は前回と同じです。前回は「発明に該当する」事例でしたが、今回は「発明に該当しない」事例となります。
発明に該当するか否か?
本件を下図のように図解。クレーム(請求項)の構成は、分かりやすいように改変して、図示し易いように組み換えたりしております。
この事例は、「発明に該当しない」という結論です。これについては、以下の通り、二段階の判断がなされております。
機器への制御か、機器での情報処理か
ビジネスモデル発明とされるものが「発明か否か?」を判断する際、コンピュータソフトウェアに関する基準を使うのですが、その基準を使うまでもなく「発明」と認定できる場合があります。
- 機器等(例:炊飯器、洗濯機、エンジン、ハードディスク装置、化学反応装置、核酸増幅装置)に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの
- 対象の技術的性質(物理的性質、化学的性質、生物学的性質、電気的性質等の技術的性質(例:エンジン回転数、圧延温度、生体の遺伝子配列と形質発現との関係、物質同士の物理的又は化学的な結合関係)に基づく情報処理を具体的に行うもの
ややこしくて難解ですが、要するに、例えば炊飯器ならば、(1)タイマー操作でヒーターでの加熱を開始(制御)する、または、(2)温度と圧力(技術的性質)を監視して炊き上がりを判断(情報処理)する、といったことになります。
これらいずれかの条件を満たせば、全体として自然法則を利用しており、「自然法則を利用した技術的思想の創作」、すなわち「発明」と認められる、とされております。
本件については、これらのいずれにも該当しない、と判断されております。
ソフトウェアとハードウェアの協働か
次に、コンピュータソフトウェアに関する基準である「ソフトウェアとハードウェアの協働」と「具体的な手順」を満たすか、について判断します。
本件については、ソフトウェアによる情報処理である「入力」(配車して欲しい!)と「出力」(配車完了!)だけが記載されており、どうやって無人走行車を探して、どうやって本人確認して、・・・など、「具体的な手順」が一切書かれていません。
すると、「協働」かどうかを見るまでもなく(というか、書かれていないのは一目瞭然)、「発明」ではないと言わざるを得ない、という結論です。
こういったものは、審査ではよく「単なる願望に過ぎない」という、割と冷徹な表現で拒絶理由が書かれることがありますが、実は、数多く出されているビジネスモデル特許には、結構あり勝ちなケースと言えます。
ビジネスの着想としては良いんだけれども、それをビジネスモデル特許にしようとしたら、ソフトウェアとハードウェアのやり取りを具体的に表現せねばならない、ということですね。