おもしろ特許

触覚ある人工皮膚を持つ「アンドロイド」の発明【おもしろ特許】

えがちゃん

今回は、株式会社ジェイテクトによる「触知センサ及びアンドロイド」の特許についてご紹介します。

ジェイテクトはトヨタ・グループの会社で、自動車部品や工作機械等のメーカーですが、パワーアシストスーツも展開しています。

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人工皮膚に触覚を持たせるには?

この発明は、具体的には人工皮膚を持ったアンドロイドに関するものです。

人工皮膚は柔らかい樹脂でできており、その樹脂にはセンサとなるコイル埋設されています。

皮膚に何か触れると、人工皮膚に埋め込まれたコイルが変形し、それにより電流が発生して、触れたことを検知する、という仕組みです。

触覚ある皮膚を持つアンドロイドの特許とは?

この特許の請求項(クレーム)は、以下のようになっております。(一部改変し、太字と着色は筆者が付しました。)

【請求項1】
外部から負荷が与えられる面を有する弾性変形可能シートと、
当該シート内に設けられているコイルと、
前記コイルと共に前記シート内に設けられてい維状磁性材料と、
前記コイルに交流電圧を印加して前記コイルのインダクタンスを検知する検知部
とを備え、
前記コイルの中心軸は、前記面に平行な方向に沿っており、
前記磁性材料は、前記コイルの内周側に複数本挿通されている
触知センサ

上記の下線部は、審査の過程でダメ出しを食らい、補正したり追記した箇所です。スンナリとは特許にならず、審査官との”攻防”があったことが窺えますね。

審査官との”攻防”の中身は?

審査官の言い分は以下の通り。最初は拒絶査定を出しています。

審査官の主張
  • 表面に人工皮膚をかぶせたアンドロイドは、すでに存在する。
  • センサーを埋め込んだ樹脂シートは、すでに知られている。
  • 以上の2点を組み合わせるのは、技術者ならば簡単に思いつく。

一方、ジェイテクトの言い分は以下。拒絶査定に対して不服審判しています。

ジェイテクトの主張
  • コイルに磁性材料の繊維を通す、という補正をする。
  • それにより、電流の変化に対する感度が、より高まる。

最終的にはジェイテクトの補正が通って、めでたく特許になっています。

新たなアイデアを出せる可能性あり?

しかしながら、この発明は本来、以下のことが本質と思われ、補正で狭めたのは少々もったいない気もします。

「皮膚にコイルを埋め込むことで、皮膚に触れるいろいろな強さの刺激を連続的に感知できる」というのが強みなので、そこまで限定するのはもったいない気もします。

この発明の本質
  • センサであるコイルが柔らかい皮膚に埋め込まれている。
  • そのため、皮膚の強くて速い変形に対し、リアルタイムに追随可能。
  • それにより、刺激の程度や変化を、強度と加速度で検知可能。

もっとも、発明の本質の捉え方は様々で、これは筆者の独自意見に過ぎません。

一方、面白い発想や構成なので、皮膚となるシートの構造や素材、コイルの走らせ方、磁性材料との位置関係など、もしかしたら、今からでも新たなアイデアが出せるかも?

特許を出した後、それに基づく新たな特許を出すことも可能。むしろ、そうして次々に新しいアイデアを積み重ねることこそ、特許法の期待するところ、とも言えます。

以上、今回はジェイテクト社の「アンドロイド」発明をご紹介しました。

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ABOUT ME
えがちゃん
えがちゃん
「ゆめ知財」の主宰者
「さきよみBENRISHI」のえがちゃんです!弁理士ですが弁理士らしい仕事はせず、知財系ライター、知財系プランナー、知財系コンサルタントとして、日々活動しております。30年余りのメーカー勤務を経てフリーランスに。知財だけでなく、会社生活、産学連携、中小支援、地方創生、森林活用などなど、色々な夢や悩みを、カフェ気分で気軽に語り合いましょう!
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