テーマ別の特許動向を、Fタームの5桁で構成されるテーマコード毎に俯瞰する試みをしています。
今回は、テーマコード:2B023「植物用支柱」。
「支柱って、ひとつのテーマになるほど、重要なの?」と、素人の筆者は思ってしまったのですが、中身を見てみると確かに、我々に身近な野菜や果物など、これが無いとちゃんと育たないんだなあ、ということを改めて認識しました。
2012年以降の約10年間に出願された特許及び実用新案が対象。J-PlatPatにて334件がヒットしました。
出願件数推移
出願件数の出願年毎の推移です。2020年出願分は全て公開されているはずなので、それ以前の経変変化は確定です。
全体としては、明らかに減少傾向にある技術分野と言えます。
出願件数ランキング
タキゲン製造株式会社は、取っ手、蝶番、錠前、ファスナーなど、建設や土木関連の金属部品や装置のメーカー。人工芝やフェンスなどエクステリアもやっており、その関連で植物用支柱を含む園芸用品も事業としています。
マックス株式会社は、植物や野菜の包装や園芸などに使用する、ホッチキスのような結束機器を主力とするメーカーです。
中国電力株式会社は、電力会社ではありますが、壁面や屋上の緑化事業を行っており、植物用支柱を含む農業・林業・園芸関連の事業を展開しています。
有限会社シームは、まさに野菜や果物を支える用具を主力とする専業と言って良いメーカーです。
出願人×キーワード相関
出願件数上位であるタキゲン製造とマックスの2社について、発明の名称をテキストマイニングして比較したものです。
発明の名称は、その会社がどのようなワードを選ぶか、クセがあるため、必ずしも技術的な内容を反映していません。
しかし本件では、やはり結束装置を主力とするマックスが、結束のキーワードで優位です。
一方、タキゲン製造は、誘引のキーワードで優位ですが、マックスも誘引に関する技術の出願を多くしております。
頻出キーワード
ユーザーローカル社のAIテキストマイニングにより、発明の名称の頻出キーワードをクラウド表示したものです。名詞、動詞、形容詞は色分けされています。
母集団が「植物用支柱」なので、誘引、結束、連結、園芸、壁面緑化など、そのテーマに必然的に関連するキーワードが中心になっています。
係り受け解析
同じくユーザーローカル社のAIテキストマイニングより、要約について出現したキーワードの感情分析(ポジティブかネガティブ、どちらで使われているか)を、AI解析により判別したものです。
誘引というキーワードが、門外漢には違和感があるかと思いますが、例えばキュウリやナスなどの蔓になる野菜や、トマトなど茎や葉に強度が無いものについて、成長が偏ったり、見栄えが悪くなったりしないよう、成長の方向を誘導する技術という意味で使われています。
ピックアップ(1)~園芸用結束機
以下、上述した各社に特有のキーワードに関連する発明について、筆者の独断と偏見で3件ほどピックアップ。
まずは、マックスによる園芸用の結束機。出願は2016年ですが、同年に集中して7件の結束機に関する出願をしています。
ピックアップ(2)~植物誘引紐用釣り具
次は、タキゲン製造による、植物を誘引するための紐を釣るための用具に関する発明です。
図を見ると、上から吊り下げるという、割とストレートな発明です。シンプルに見えますが、吊り下げ金具について巻取りを容易にする形状に巧妙な工夫があります。
ピックアップ(3)~つる植物の登攀材と緑化システム
中国電力による、壁面や屋上緑化のための支柱に関する発明です。
「登攀」と言えば登山やクライミングを思い浮かべますが、ここでは、植物のつるが支柱に沿って伸びていくことを登攀と呼んでいます。
全体の見栄えや手入れを考慮した発明でもあり、青色LEDを装備することにより、つる植物がむやみに伸びて手入れの手間が増えるのを抑制するという機能を装備しています。