今回は、「魔法」に関する特許を見てみましょう。
漫画やアニメに出てくる「魔法」というのは、だいたい”実現不可能”なので、特許法のいろんな条文でもって”拒絶”される運命(?)にあります。
しかし、「魔法」というワードにも、実はいろんな使い道があって、実際、「魔法」をタイトルに持つ特許は意外とたくさんあります。
「魔法」をタイトルに持つ特許
その筆頭は、「魔法びん」に関する特許です。下表は、代表的な「魔法びん」のメーカーについて、いつ何件くらい特許を出してるか、マップ(表形式)にしたものです。
これはこれで、深掘りすると面白いのですが、「おもしろ特許」としてはマジメ過ぎて面白くないので、今回は、この「魔法びん」を除外したいと思います。
「魔法びん」関連を除いてみたら・・・
J-PlatPatで、「魔法」をタイトルに持つ特許から、「魔法びん」関連を除いてみましょう。以下、その具体的な方法です。割と単純で、「魔法びん」に関するキーワードをとにかく並べて除外する、というやり方です。
ただ、「魔法びん」「魔法ビン」「魔法瓶」「魔法壜」は、別々のワードとみなされるので、いちいち列挙しないといけないのが面倒ですが。
ついでに、「魔法びん」に伴ってよく出てくる「加熱調理」や「断熱」も除外してしまいましょう。すると、以下の13件が残りました。
黄色罫線は、登録になったものです。登録されたということは、ちゃんと”実施可能”だということになります。
その他、黄色罫線が無い件も、特許の書き方としては甘さがあるものの、技術的には不可能とは言えない、割とマジメな特許ばかりで、これら発明者のみなさまには失礼ながら、少々意外な結果でした。
「魔法鏡」の特許とは・・・?
この内、「陽・陰の映像となる魔法鏡の製造方法」という、ちょっと怪しげ(?)な、でも「おもしろ特許」マニアとしてはワクワクするタイトルの特許を、ちょっと見てみましょう。
以下、特許に添付されている図面を拝借して、ちょっと補足説明を追加してみました。
真ん中に見える縦長の長方形が、魔法鏡(マジックミラー)の断面です。これは、片面(右側)に金属膜が蒸着されており、その”両面”(図では右と左)に、文字や記号が”薄っすら”と打刻されています。
こうすることで、光を当てると文字が浮き上がり、しかも、表面と裏面でポジ(陽)とネガ(陰)の画像が入れ替わるという、興味深いマジックミラーに仕上がっています。
この”両面”と”薄っすら”というのがミソで、特許庁の審査では最初、「よくあるマジックミラーでしょ」的な拒絶理由が出されたのですが、発明者は「いやいや、よくあるマジックミラーは片面にしか打刻できないけど、これは両面、しかも薄っすら打刻してるから、鏡の機能も失わないんだよ」と反論して、見事に特許になっています。
発明の動機~IPランドスケープで深掘るべきポイント
上記のマジックミラーは、技術的な内容としては、相当にマジメなものでした。期待した(?)「おもしろ特許」とはちょっと違ったかも・・・
しかしながら、この特許を読んでみると、その発明の動機は「従来のマジックミラーには面白みがない」からという、”遊び心”が感じられるものでした。
一方、IPランドスケープをやるとき、その発明や特許の意義を”深掘り”することは、重要なステップかと思います。それは特許の場合、「背景技術」「発明が解決しようとする課題」「発明の効果」「産業上の利用分野」などに、ヒントが隠れていることが多々あります(全く書いてないものも多いですが)。
上記特許の場合は「面白みがないから」と、かなりアッサリと書いてありますが、そこを深掘りするのがIPランドスケープの要諦(肝心なところ)だと思います。
「面白い」と思うのは誰なのか(ターゲット顧客は誰か)、その「何が面白い」のか(どんな用途が効能あるか)、他に誰がその「面白さを提供」しているか(競合の捉え方、ミラー製造メーカー、看板屋、ゲーム開発業者、パチンコ屋・・・)などなど。
その深掘り如何で、少なくとも、特許の母集団の捉え方が大きく変わり、結論の出し方に大きく影響するかと思われます。
・・・「おもしろ特許」とは違う方向に行ってしまいましたね。今回はこのくらいで。