オープン&クローズ戦略

「QRコード」のオープン&クローズ戦略

ここまで、「QRコード」の特許や商標にまつわる、スッタモンダ(?)を見てきましたが、そろそろ、そのオープン&クローズ戦略について、コワゴワ(?)触れてみようか、と思います。

QRコードドットコム

デンソーウェーブは、その名も「QRコードドットコム」という専用サイトを運営しています。

https://www.qrcode.com/

そこでは、QRコードの開発秘話から、導入の方法、利用に当たっての条件まで、QRコードに関するあらゆることが掲載されています。

別に、デンソーウェーブの回し者でも何でもない、アカの他人なのですが、QRコードのオープン&クローズ戦略をリスペクトする者として、ついついハマっております。

QRコードのオープン&クローズ戦略とは?

QRコードのオープン&クローズ戦略については、いろいろなところに詳細な解説があるため、改めてたいした話も無いのですが、ごく大雑把に振り返っておきたく思います。

あくまで筆者が個人的に認識している構図に過ぎず、粗過ぎるかもしれませんが、だいたい下図のようなことかと思われます。

先に見て来た通り、デンソーウェーブはQRコードに関する特許と商標を幾つか持っています。それをオープン&クローズ戦略の中で如何に利用するか。以下、3C分析(自社・顧客・競合)の視点で見ると、およそ以下の通り整理できるかと思います。

自社(デンソーウェーブ)

オープン戦略QRコード自体の特許権や商標権は原則行使せず、自由に使うことを許可することで、顧客や競合の参入を促進し、市場拡大を目指す。但し、使い方にはルール(標準)を設け、誰でも使いやすくすると共に、偽物の横行を防止することで、市場安定を目指す。

クローズ戦略生成装置や読取装置の特許権は行使し、競合の模倣を防止することで、自社の収益増大を目指す。ルール(標準)を乱す存在に対しては、QRコード自体の特許権や商標権を例外的に行使し、市場安定を維持すると共に、市場支配できるポジションを維持する。

顧客(QRコードを使う人々)

オープン戦略の効果QRコード自体の利便性と、標準化による汎用性(どこでも使える安心感など)があることを誘引力として、利用する顧客が増大する結果、市場拡大に繋がる。

クローズ戦略の効果QRコードの開発者であり、ルール(標準)の保護者であるという信頼感が、競合他社に対する競争優位性自社のブランド力)となり、生成装置や読取装置選択する動機付けとなる結果、収益増大に繋がる。

競合~協業(A・Tコミュニケーションズなど)

オープン戦略の効果QRコード自体の集客力と、標準化による技術仕様の統一性(技術開発や普及努力の省略)を誘引力として、関連する商品開発やサービス提供を担う競合や協業が続々と参入する結果、市場拡大に繋がる。

クローズ戦略の効果:QRコードや周辺装置の先発(リーダー)知財権の保有者ルール(標準)の管理者というポジションが、競合の安易な模倣を防止する効果を発揮し、自社の収益増大に繋がる。ただし、その影響力が過剰だと、逆に競合の参入を抑制してしまうリスクあり。そこで、技術や商品・サービスのクロスライセンスに応じることで、競合や協業の参入を維持し、市場拡大をより促進すると共に、市場支配のポジションをより強化することも可能。

終わりなきオープン&クローズ戦略

こういった戦略は、いちど仕掛けて終わりではなく、維持するために不断の努力が必要となります。

それは、先の商標に関するデンソーウェーブとA・Tコミュニケーションズとの争いの例からも分かる通りで、ちょっと油断すれば、技術も標準も他社に持って行かれるリスクが常に存在します。

そういった意味で、オープン&クローズ戦略は、メリットとデメリットが裏腹の戦略です。よく「基本特許を取ったから安心」と思ってしまいますが、この事例を見れば、そんなに簡単な話ではないなと、肝に銘じねば、と思う次第です。

お読みいただきまして、誠にありがとうございました!

 

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