特許解析

「先読み」と「特許戦略キャンバス」について~特許動向「土作業機」より

ここしばらく、特許分類「Fターム」を利用して、技術テーマ別の特許動向を俯瞰しています。

その中、いわゆる「先読み」(将来予測)や「特許戦略キャンバス」(事業戦略プロファイル構築)も、筆者の独自研究(?)について少しずつ触れてきました。

今回、「先読み」を少しだけ深掘りしてみたいと思います。題材として、前回の「土作業機(その他)」を使います。

改めて、この「土作業機(その他)」の母集団は、2012年1月1日以降の約10年間に出願された特許及び実用新案を対象に、J-PlatPatにて765件がヒットしています(2022年8月1日現在)。

最近の出現するキーワード

最近に出現しているキーワードは、これから伸びる技術の「予兆」である可能性があり、それをどのように把握するかは、IPランドスケープでも大きな課題です。

下表は、2020年以降に出現するキーワードの内、それ以前にはあまり現れなかったキーワードを、ある種の「重みづけ」をして並べたものです。

「重みづけ」の方法については、機械学習でも頻出する課題です。何通りも考えられますが、基本的には、そのキーワードの出現するパターンをどのように捉えて、どのような演算を施すか、ということになります。

「重みづけ」の演算には、ある種の「関数」が用いられます。機械学習のニューラルネットワークでも、シグモイド関数、tanh関数、指数関数、対数、双曲線、一次関数など、事例に応じて様々なものが試されています。

上記の例では、キーワードの時系列による出現プロファイルに対して、基本的には指数関数的な演算を施して、最近に出現するキーワードほど比重が高くなるように演算した結果です。

演算の方法には、どれが正解というものは無いと思います。技術分野によっても違うでしょうし、どのようなプレイヤーがどのように争っているか、その時々の競争環境によっても左右されます。最後は「納得感」が得られるか、ということかと思われます。

出願件数推移とランキング

上記の最近に出現するキーワードで改めて母集団を取り直し、時系列推移を見たのが下図です。上の縦棒グラフが新たな母集団(124件)、下が前回の母集団(765件)です。

※出願件数の推移は出願年毎に表記。2020年出願分は全て公開されているはずなので、それ以前の経変変化は確定データ。

これを見ると、ドローンジャパンDRONEiPLABが新たに出現していることが分かります。最近に出現するキーワードの内、上位に来る「応答」や「コントローラ」は、この両社の特許によるものです。

ちなみに、「等高線マップ」にすると下図のようになります。既存の上位メーカーがある程度の”山脈”を形成している中、ドローンジャパンとDRONEiPLABによる”急峻な山”がそびえ立つことが予感されます。

特許戦略キャンバス

既存企業から小橋工業クボタ、新規参入からドローンジャパンDRONEiPLABをピックアップし、キーワードのプロファイルの違いを見たのが下図です。新規参入の両社のプロファイルが完全に重なっているのは、いずれも両社の共同出願であるためです。

「”特許”戦略キャンバス」の元となる理論である「ブルーオーシャン戦略」では、既存企業の事業に照らして、無駄なものは省き、新たなものを付け加えるか、または、特定のサービスに特化することで、全く異なる新たな市場や顧客層を開拓する戦略を提唱しています。

ドローンジャパンが小橋工業を追撃している可能性は低い感じがしますが(上位概念があまり共通しないため)、仮にそのようにターゲティングしたとすると、以下のような戦略が考えられます。

  • 追加:「応答」「自律走行」など、新たな要素で”独自性”や”斬新性”を狙う。
  • 削除:「畝」「畦」「塗り」など、既存の要素(競合の”得意技”)を避ける。
  • 増加:「コントローラ」など、特定要素の比重を高くして”差別化”を狙う。
  • 減少:「信号」「爪」など、特定要素の比重を低くして”差別化”を狙う。

これらは、「ブルーオーシャン戦略」に書いてある訳ではなく、筆者自身が覚えやすいように勝手に考えた区分です。本件に限っては、ちょっとミスマッチな感じがしますが。

ピックアップ~水田除草機・制御方法・プログラム

上記で取り上げたドローンジャパンDRONEiPLABの特許について、どのような内容かを簡単に触れておきます。水田の除草を自律走行により行う機器に関する発明になります。

ローラー150に付いた爪160で除草する構造で、除草に力が必要な場合でも引っ掛かって停止などしないよう、前記ローラーとは別の駆動源を持つ車輪190にて走行を維持できるようになっています。

以上の動作を、コントローラ等で有線または無線により受ける命令や、車輪が受ける作用からのフィードバックに対して「応答」しつつ、「自律走行」できる仕組みのようです。

上記では、追加・削除・増加・減少という、要素の多寡について挙げましたが、それらを、どのような種類の要素に適用するかは、戦略として重視すべきポイントのひとつです。

例えば、車輪や爪といった「技術構成」なのか、除草力や推進力といった「機能・特性」なのか、畦塗りや除草といった「用途」なのか。これらの選択も、戦略として明確にしておくべき要点と言えます。

お読みいただきまして、誠にありがとうございました!

 

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