特許動向

Fタームで見る特許動向~「土作業機(3)ロータリ」(テーマコード:2B033)

特許分類「Fターム」(特にFタームの5桁で構成されるテーマコード)を利用して、技術テーマ別の特許動向を俯瞰する試みをしています。

今回は、テーマコード2B033土作業機(3)ロータリ」。

土作業機のFタームは4種類に分かれていますが、今回のロータリは、前回の「プラウ」や「ハロー」と同様、田んぼや畑の土を耕したり整地したりするのに使いますが、機械的な回転方式のものになります。

2012年1月1日以降の約10年間に出願された特許及び実用新案が対象。J-PlatPatにて600件がヒットしました(2022年7月30日現在)。

今回、「特許戦略キャンバス」についても若干触れたいと思います。

頻出するキーワード

当然ながら、「耕耘機」(耕運機)と「ロータリ」に関するキーワードが中心になります。

ユーザーローカル社のサイト「AIテキストマイニング」を利用して、発明の名称および要約頻出キーワードをクラウド表示したもの(上図が発明の名称、下図が要約)。名詞、動詞、形容詞は色分けされている。

出願件数推移およびランキング

ヰセキ、クボタ、ヤンマーなどの農機総合メーカーに対して、小橋工業や松山は、ローターやハローなど、トラクター等に使用する交換用デバイスを提供するメーカーになります。

本テーマは、そうしたデバイスであるロータリに関するものであるため、小橋工業や松山が比較的上位に来ています。ただし、会社の売上規模等を見れば、ヰセキは一桁、クボタは二桁くらい大きいです。

※出願件数の推移は出願年毎に表記。2020年出願分は全て公開されているはずなので、それ以前の経変変化は確定データ。

特許戦略キャンバス~出願人とキーワードから考える戦略

今回、ちょっと戦略寄りの話に触れてみたいと思います。

ブルーオーシャン戦略」で有名になった「戦略キャンバス」ですが、特許データを使えば、「出願人毎に特徴的キーワード対比」による戦略フレーム、という応用も考えられます。筆者はこれを「特許戦略キャンバス」と名付けています。

例えば下図のように、出願人毎の特徴キーワードプロファイルを、折れ線グラフで示したものが典型例になります。これは、ブルーオーシャン戦略の戦略キャンバスの表現そのものになります。

例えば本件では、上位に出てくる「歩行」や「耕耘」などは、出現頻度が各社で高いため、特徴キーワードとは言えません。

一方、下図のように、出現頻度が少ないキーワードに着目すると、例えば小橋工業では、「塗り」「畔」「判定」などが、独自の特徴キーワードと言えるかと思われます。

こうした特徴キーワードに注目して特許を読み込んでいくと、各社の戦略が分かることがあります。

小橋工業の場合、「畔塗り機」について、消耗の少ない機械の提供を特徴にしようとしていることが分かります。「畔塗り」というのは、田んぼと田んぼを区切る道(畔)に空いたモグラの穴や凸凹を均して防水性や強度を高めるための機械です。

また、「判定」も小橋工業に特徴的なキーワードで、耕耘爪の摩耗度合いを判定したり、耕耘自体が上手く行ったか否かを判定する技術に特徴を置こうとしていることが伺えます。

戦略キャンバスは、既存業界の技術やサービスに対して、新たな要素を追加すると共に、不要なものは除去することで、既存業界のビジネスを破壊的に刷新しようとする試みを支える道具ですが、特許戦略キャンバスはその特許版で、使い方は同様です。

もし、このロータリ業界に新規参入する場合、何を付加して何を除去するのが良いか、既存メーカーのプロファイルを見ながら考えることになります。

上記では、小橋工業のプロファイルのごく一部を見たに過ぎません。これだけだと、従来型の単なる特許分析になります。上記の例で言えば、小橋工業をどう攻略するか、または逆に、小橋工業の立場でさらにどのような戦略を考えるか。特許戦略キャンバスは、その分析を踏まえた先を考えるツールとなり得ます。

お読みいただきまして、誠にありがとうございました!

 

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