前回までに10件ちょっと、テーマ毎の特許動向を見て来ていますが、直近の3~5年程度と、短期のトレンドしか見ていません。
「先読み」(将来予測)をするために、これから伸びる分野、メーカー、キーワードを見るには、直近の特許動向だけで良いだろう、と考えてのことです。
しかし、長期のトレンドが不要かというと、一概にそうとは言えないかと思われます。その分野が、長期に見て成長し続けているのか、それとも衰退傾向にあるのかで、見るべきポイントが違ってくる可能性があるかな、と思っております。
以下、具体例を3つほど挙げて、考察してみたいと思います。利用するのは、前回まで利用してきたテーマコード(Fタームの上位5桁)です。
この特許分類は、1987年から導入されたものですが、その分類自体は、およそ1972年くらいまで遡って付与されています。したがって、テーマコードやFタームを使えば、この50年くらいの長期トレンドを俯瞰することができます。
長期に減少傾向にあるテーマ
前回まで、テーマコードの上位2桁が2Bの技術分野を見てきましたが、これらは一次産業(農林水産業)に関連する分野であり、多くは長期的に減少傾向にあります。
「先読み」という意味では、3通りくらいの考え方ができるかと思われます。
1)先が無いから、このテーマは対象から外そう
2)我慢して、残存者利益を確保しよう(業界内に居る場合)
3)新たな技術やマーケティングを投入して、新規展開を図ろう
いずれのスタンスを取るかで、「先読み」の着目ポイントは変わってくるかと思われます。
長期的に増加傾向にあるテーマ
例えば「IoT」は、比較的新しく設けられた特許分類の技術分野で、こうした分類はだいたい増加傾向を示します。
こうした場合は、その特許分類自体に着目して、その中からさらに有望な分野を深掘りしていくということになるかと思います。
もっとも、「IoT」に限って言えば、それが特定の技術を示すものではなく、ビッグワード的なカテゴリ分けに過ぎないので、むしろ、その「IoT」が各技術分野でどのように利用されているのかを見るのが妥当かと思われます。
特許とピークが過ぎているテーマ
下図は太陽光発電の例ですが、特許的には2010年代前半にピークを迎えており、それ以降は減少傾向にあります。
一般的には、研究開発競争がひと段落し、その技術的な成果に基づく事業的な競争に移行している場合、このようなトレンドを示すことがあります。太陽光発電などは、その典型例と言えるかと思われます。
こうした場合は、新たな技術開発というよりも、どのようなビジネスモデルで勝っていくか、ということに視点を置く必要があると言えます。
我が国における特許出願傾向
以上の動向を見るのに気を付けねばならないのは、「全体の特許出願件数はどんなトレンドを示しているか?」です。その増減がそのテーマ特有なのか否かを判断するためです。
それを見るには、特許行政年次報告書2021年度版 第1部「知的財産をめぐる動向」 第2章「企業等における知的財産活動」の41頁目にある表が参考になります(下図)。
実用新案を除けば、2000年頃をピークに、なだらかな山形を描いていますが、上述した3つの事例ほど、極端な増減を示している訳ではありません。つまり、上述の3事例の傾向は、そのテーマ特有のものと言って差し支えないかと考えられます。