以前に示した「アンドロイド」の特許リスト中、今回は、株式会社ジェイテクト。トヨタグループに属しています。
自動車部品や工作機械等を事業とするメーカーですが、パワーアシストスーツも展開しております。
今回取り上げる発明の名称は「触知センサ及びアンドロイド」です。
具体的には、人工皮膚を持ったアンドロイドで、その皮膚は何かに触れたことを感知(触知)できるセンサになっております。
その皮膚は柔らかい樹脂でできており、中にセンサとなるコイルが埋め込まれております。
もし、皮膚に何かが触れると、それによって柔らかい皮膚および埋め込まれたコイルが変形します。すると電流が流れ、触れたことを検知できる、という仕組みです。
請求項(クレーム)は以下のようになっております。
【請求項1】
外部から負荷が与えられる面を有する弾性変形可能なシートと、当該シート内に設けられているコイルと、前記コイルと共に前記シート内に設けられている繊維状の磁性材料と、前記コイルに交流電圧を印加して前記コイルのインダクタンスを検知する検知部と、を備え、
前記コイルの中心軸は、前記面に平行な方向に沿っており、
前記磁性材料は、前記コイルの内周側に複数本挿通されている
触知センサ。
上記の下線部は、審査に基づいて補正で追記した箇所です。審査官は、「表面に人工皮膚をかぶせたアンドロイドはすでにある」「センサーを埋め込んだ樹脂シートは公知」「組み合わせるのは簡単ですよね」という感じで、最初は拒絶査定を出しています。
株式会社ジェイテクトは、それに対して不服審判を請求しています。最終的には「コイルに磁性材料の繊維を通す」という補正をし、流れる電流(正確にはインダクタンス)の変化への感度をより高める、という補正をして特許になっています。
本来は、「皮膚にコイルを埋め込むことで、皮膚に触れるいろいろな強さの刺激を連続的に感知できる」というのが強みなので、そこまで限定するのはもったいない気もします。
しかし、当初から明細書に書いて無ければ、補正するのも限界ですね。皮膚となるシートの構造とか素材とか、コイルの走らせ方とか、出願前にいろいろアイデア(妄想?)を膨らませておければよかったのに、とも思えるケースでした。
しかし、様々なケースに配慮できている明細書を仕上げることは、永遠の課題でもありますから、軽々には言えないですね。難しいところです。