前回示した「アンドロイド」の登録特許リスト中、今回は、「ドクター中松」として有名な中松義郎氏の発明について。
発明は「発声するアンドロイド」。具体的には、発声と唇の動きを連動させる発明です。
請求項(クレーム)はひとつだけ。明細書のページ数も4頁。非常にシンプルな特許です。最小限の労力で効率的に特許を獲得する。さすがはドクター中松、といった感じがします。
クレームは以下の通りです。下線部は審査に基づいて補正・追記された箇所です。
【請求項1】
ボイスコイルボビンの動きでスピーカの振動板を振動させて発声する発声アンドロイドであって、
前記ボイスコイルボビンの動きをレバーとピボットを介して拡大して下顎に伝達することにより発声による前記振動板の動きと唇を動かすメカニズムを連動させて本当に発声しているように感じさせる事を特徴とする発声アンドロイド。
ポイントは、スピーカーの振動という小さな動きを、レバーを使ったクランク機構によって大きな動きに変換して、唇に伝えているところかと思われます。
上記の補正は、発声と振動板と唇の動きがどう連動するのか、不明瞭だったため補足したものです。
使っている技術は特に最新のものという訳ではありません。スピーカーにボイスコイルを使うのも、クランク機構も、ずいぶん古い技術です。
しかし、そうした古い技術を組み合わせることで、アンドロイドという最新の用途分野に応用した発明に仕上げて、特許を獲得しています。
ちょっとした発想の転換で、特許が取れる発明を生み出すことができるという、お手本みたいな特許ですね。