ビジネスモデル特許の審査基準を読み込む(筆者個人的な)チャレンジの2回目。
コンピュータソフトウェア関連の「附属書B」から「ビジネス分野」と記載ある事例をピックアップ。
今回は、「〔事例 2-3〕 商品の売上げ予測プログラム 」(p.52)を取り上げます。
本件の概要
発明の名称は「商品の売上げ予測プログラム、当該予測プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び商品の売上げ予測装置」となっており、ソフトウエアによる商品の売上げ予測処理に関するものです。
本発明は、スーパーマーケットなどの量販店において、日々の売れ行きの変動が大きい商品について、ある特定の日における売り上げについて、在庫管理担当などの勘や経験に頼らず、ある一定の予測結果を短時間で得ることができる売上げ予測システムです。
店舗内のシステムなので、需要者(便益を受ける者)も供給者(便益を与える者)も店舗マネージャーだと思われますが、売上予測システムを外部サービスだとすれば、供給者(売上予測サービス提供者)が需要者(店舗)からのインプットを受けてアウトプットを流す形態のビジネスモデルも可能かと考えます。
発明に該当するか否か?
本件を下図のように図解。クレーム(請求項)の構成を分解して表示(一部省略あり)。
この事例では、請求項1・2・3があり、それぞれ、プログラム・記録媒体・予測装置となっておりますが、情報処理のプロセスはいずれも同じです。結論として「発明に該当する」となっています。
理由として、「種々の変動条件と補正ルールに基づいて売上予測」という「使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工」が、「複数の記憶手段と記憶手段からのデータの読み出し・選択等を制御する手段」という「ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって実現されている」からOK、ということです。
発明のカテゴリについて
この事例では、発明のカテゴリ別に請求項1・2・3が設けられており、それぞれ、以下のようになっています。
- プログラム:コンピュータを上記の各手段として機能させるプログラム
- 記録媒体:上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
- 装置:上記の各手段からなる予測装置
このいずれも、結論として「発明に該当する」となっています。
記録媒体については、「売上予測プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」だから、という簡単な解説になっています。ごく簡単に言えば、プログラムだけでは発明として認定できないけれど、ハードが何らかの形で関与していれば認定しようという方針に基づくもので、ハードとしてコンピュータ(プログラムを読み取り可能)と記録媒体(プログラムを記録)が要件になっています。
予測装置については、「売上予測プログラムと協働して動作する情報処理装置」だからという、これも簡単な解説がなされています。これが「ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段」という要件を満たす、ひとつの考え方だということになります。
要約すると・・・
改めて、以下の各発明カテゴリについて、発明として認定される要件は以下の通りかと思われます。
- プログラム:情報処理の各ステップをコンピュータ等のハードウェアが担う旨(そのハードウェアが情報処理の各ステップにて動作することを含む)が明記されていること
- 記録媒体:情報処理のステップがプログラムとして記録され、かつ、コンピュータで読み取り可能な記録媒体であること
- 装置:情報処理の各ステップを担う(情報処理の各ステップに従って動作することを含む)コンピュータ等のハードウェア