ビジネスモデル特許の審査基準を読み込むチャレンジ(?)を始めようかと思いますが、具体例に当たるのがいちばんと思い、そこに記載のある審査事例を中心に見ていこうかと思います。
まずは、コンピュータソフトウェア関連の「附属書B」から、「ビジネス分野」と記載ある事例をピックアップ。今回は、「〔事例 2-2〕 ネットワーク配信記事保存方法 」(p.49)を取り上げます。
ビジネスモデルか否か?
本件は、ネットワークで配信される記事の中から、所定のキーワードだけを取り出して、サーバに保存するという、割と単純な発明です。
これをビジネスモデルと言えるかは、何とも言えませんが、筆者は、①ソフトウェアとハードウェアで情報処理されていて、②供給側(便益を提供する者)と需要側(便益を受ける者)が認識できるならば、少なくとも特許的にはビジネスモデルと考えればよいか、くらいに考えています。
発明に該当するか否か?
本件を図解すると下図のような感じかと。なお、クレーム(請求項)の構成は一部省略しています。
この事例では、請求項1と2、ふたつの事例が挙げられており、請求項1は「発明に該当しない」、請求項2は「発明に該当する」となっています。
理由として、請求項1では、「所定のキーワードが存在するか否かの判断が、特定の手段ではなく、ユーザ(人間)の精神活動に基づいて行われて」おり、「ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段又は具体的手順によって実現されているとはいえない」ため、「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現」との要件を満たさない、ということです。
一方、請求項2では、「使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が、記事
保存判断手段、記事保存実行手段及び記事記憶手段という、ソフトウエアとハ
ードウエア資源とが協働した具体的手段によって実現されている」からOK、ということです。
要約すると・・・
要するに、「情報の演算または加工」に「人の判断が介在」していると、ビジネスモデル特許にならない、という判断かと、思います。
人の判断が介在すると、それは「人為的」なものなので、「自然法則を利用」していない、ということのようです。(「発明」の定義は「自然法則を利用した技術的思想の創作なので、これに該当しないということ。)
ゲームのルールなど、自然法則とは関係なく、人間が取り決めただけのものは、現実の社会では立派なビジネスモデルと言えますが、特許の世界は「自然法則を利用」という大前提(縛り)がある、ということですね。
この取り決めは、各国で微妙に異なりますが、日本では割と厳密に判断する傾向があるような気がします。