特許分析

技術トレンドの相関関係を見るには?~特許分類とキーワードの相関分析

えがちゃん

前回、特許分類キーワードを使った特許分析を紹介しましたが、全体的な増減傾向を見るに留まりました。実際の特許分析としては、もう少し踏み込むことになります。

そこで今回、特許分類やキーワードといったパラメーターが複数ある場合、それらの動きが相互に関係しているかどうかを、相関分析で判断する方法をご紹介します。

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キーワードと特許分類のトレンド

下表は、前回の記事でも触れたバイオマス母集団とした特許マップです。今回、相関関係を見るパラメーターとして、以下を取り上げます。

  • 特許分類としてC10(「改質ガス・天然ガス等」分野)
  • 特許分類としてC12(「微生物・酵素・発酵」分野)
  • キーワードとしてセルロース(「バイオマス」分野の鍵となる素材技術)

ここで、特許分析の目的として、以下2つの仮説検証を設定します。

  • 「改質ガス・天然ガス等」分野の技術動向に対しては、セルロースという素材技術の動向が影響している。
  • 「微生物・酵素・発酵」分野の技術動向については、セルロースという素材技術の動向が影響している。

もし、相関分析で両パラメータの相関関係が認められない場合、その仮説は誤りと判断できます。

散布図でみる相関関係

上記した棒グラフの集まりのように、数値データの群が複数ある場合、それらがお互いに相関関係にあるか否かは、「散布図」で簡単に見ることができます。

上記した例では、「C12(微生物・酵素・発酵)」のトレンド(件数)を縦軸に、「セルロース」のトレンド(件数)を横軸に取ると、下図のような散布図になります。

これを見ると、点線で示したように、右肩上がりの直線に近似できそうです。このような場合、微生物・酵素・発酵技術のトレンドとセルロースのトレンドには相関関係あり、と判断できます。

実際、特許件数が盛り上がりを見せた2005年頃から2018年頃にかけては、セルロースを主成分とするバイオマスについて、発酵技術で分解処理し、いわゆるバイオエタノールなどを製造する研究が盛んに行われています。

相関係数による判断

この相関関係を定量的に見るには、「相関係数」を利用する手があります。

一般に、相関係数が0.4以上なら相関あり、0.7以上なら強い相関あり、などと判断されます。Excelの関数を使えば簡単に算出できます。

上記のケースでは、相関係数は0.84であり、強い相関があると言えます。

一方、「C10(改質ガス・天然ガス)」と「セルロース」の対比では、相関係数は0.3を下回り、一般的には相関関係なし、という判断になります。

しかし、相関係数の計算式は単純なため、過信は禁物です。実際には相関があるのに低く出たり、全く無関係なのに高く出る場合もあります。ほかに裏付けを取った方がよく、あくまで予備的な判断というに留めるのがよさそうです。

相関分析の使い道

今回は、特許分類とキーワードを取り上げ、それぞれの相関関係を分析する方法について解説しました。

このような分析は、たとえば何らかの流行があったとき、その要因は何だったのか、後から振り返るのに有用です。

一方、割と長めのトレンドを追わないと精度はあがらず、来るべき流行を予測する、といった用途は、なかなか厳しそうです。

ただし、特許データでは難しそうでも、購買動向や検索トレンドなど、リアルタイムに近い状態で入手できる情報の相関を見るには、このような分析が生かされています。

みなさんも、身近で入手できるデータを使って相関分析できないか、探ってみるのも面白いのでは?

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えがちゃん
えがちゃん
「ゆめ知財」の主宰者
「さきよみBENRISHI」のえがちゃんです!弁理士ですが弁理士らしい仕事はせず、知財系ライター、知財系プランナー、知財系コンサルタントとして、日々活動しております。30年余りのメーカー勤務を経てフリーランスに。知財だけでなく、会社生活、産学連携、中小支援、地方創生、森林活用などなど、色々な夢や悩みを、カフェ気分で気軽に語り合いましょう!
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