雑記

【コラム】特許検索システムとAIに期待すること

えがちゃん

筆者はAI人工知能)の専門家ではないですが、特許検索システムの選定などに関わっていると、AIの話を避けて通ることができません。

特許検索システムには、いわゆるAI、正確に言えば機械学習が、普通に使われるようになってきました。いわゆる簡易検索などの機能は、そうした技術を一部利用しているようです。

一方、システムを開発しているベンダーによれば、深層学習ディープラーニング)の本格活用は未だこれからとのこと。素人には、機械学習深層学習の違いも怪しいですが・・・。

ただ、ユーザー視点で言えば、上述した簡易検索や類似検索など、確かに検索機能は進歩している感がありますが、一方、得られた検索結果の解析機能となると、まだまだというのが正直な印象です。

例えば、時系列マップやマトリックスマップなど、検索結果をビジュアル表示するような機能は、いろいろな特許検索システムに搭載され始めましたが、まだ使えるレベルではないなあ、という感想です。

筆者はこれまで、特許検索システムのあるべき姿について、色々なベンダーと議論してきました。そこで一貫して要望してきたのは、特許検索から特許解析までの作業プロセスできるだけ省力化したい、ということでした。

少なくとも、特許検索システムのデータを特許マップ作成ソフトに手動で載せ換えてビジュアル化するような作業は、AIの得意とするところだと思います。ゆくゆくは完全自動化も可能でしょう。

筆者は、それを「即時ミエル化」と称して、IPランドスケープを推進する環境を整えるために必要な機能なんだと、訴え続けてきました。

そうしたことを言い始めたのは2017年頃からですが、それは今もって実現できていません。その状況について、今現在のAIの発展状況を踏まえて、今後のことを考察してみたいと思います。

※注(2025.1.16):これを執筆した2022年以降、生成AIの劇的な進化があり、状況は一変しています。以下は当時の状況を踏まえたものです。

先行文献調査 vs 技術動向調査

特許調査の種類として多いのは、先行文献調査技術動向調査だろうと思われます。両者の違いは分かりづらいですが、簡単に言えば以下の違いがあります。

  • 先行文献調査:対象となるテーマ技術明確で、それに対して、先行する同じカテゴリ技術に関する具体的な文献個別ピックアップ
  • 技術動向調査:対象となるテーマ未定だが、技術アイデアはあるという段階で、それに関連する技術開発動きをついて、技術群傾向トレンド)として把握

別の言い方をすると、筆者の私見ではありますが、以下のようにも言えるかと思います。

  • 先行文献調査:答えや目標がある(類似とされる先行文献を列挙すればゴール)
  • 技術動向調査:答えや目標がない(どうすればゴールなのか手探り状態)

IPランドスケープの役割は、この答えや目標がない状態に対して、答え目標提示することだと、筆者は考えています。

例えば、市場は伸びているのか(市場成長性)、当社は有利なのか(競争優位性)、少なくとも判断材料提示することが役割と言えます。

教師あり学習 vs 教師なし学習

少し話は横道にそれますが、上述した答えが「ある」「ない」という点については、機械学習における「教師あり学習」「教師なし学習」の違いに通じるところがあるかと思われます。

教師あり学習」と「教師なし学習」の違いは、ごく簡単に言えば以下の通りです。

  • 教師あり学習答えある大量の情報から、正否判断する方策を学習
  • 教師なし学習答えなき大量の情報から、特徴把握分類する方策を学習

つまり、「教師あり学習」は、答えがある状態を前提に、正解率の向上を目指す作業と言えます。先行文献調査は、それが先行文献に該当する・しない判断する作業でもありますから、こちらに近いと思われます。

一方、「教師なし学習」は、答えがない状態を前提に、とにかく仕分ける作業と言えます。色別に分類されたヒートマップなどはこの典型例で、技術動向調査はこちらに近いと考えます。

「即時ミエル化」への期待

深層学習のそうした特徴を利用すれば、特許情報ビジュアル化特許マップ作成)を自動化するのは、それほど困難ではないと想像します。

最近の特許検索システムには、特許情報のクラスタリング類似度ランキングなどの機能が搭載されていますが、機械学習の成果と聞いており、一部にはディープラーニングの簡単なものが応用されているとも言います。

しかし、グラフを自動作成するならば、いわゆるBIツールが幾つか存在しており、特許検索システムのそれと比べると、大規模なデータの扱いやリアルタイム性など、まだまだ及ばない感じがします。

即時ミエル化」で期待するのは、筆者がIPランドスケープに重要と考えている「経営・事業・研究への羅針盤」たる役割が強力にサポートされること、それにより、人間の労力をデータ分析作業から観察・判断シフトさせることです。

場合によっては、その観察・判断すら、AIがサポートするようになるかも知れません。その会社やテーマに特有の情報を深層学習させれば、その会社が進むべき方向性について、少なくとも選択肢を提示するようになるかも知れませんね。

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筆者の紹介
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「ゆめ知財」の主宰者
弁理士&知財経営コンサルタント。30年余りのメーカー勤務を経て、フリーランスとして活動中。知財だけでなく、会社生活、産学連携、中小支援、地方創生、森林活用など、色々なことをカフェ気分で気軽に語り合いましょう!
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