特許解析

注目すべき技術の組合せを探る~特許分類とキーワードの相関

前回の記事「特許分類とキーワードのトレンド比較~バイオマスの場合」で、技術トレンドの関係性を見るのに相関係数を使いました。

今回、その応用編として、「注目すべき技術の組合せ」を大まかに探る方法を、簡単にご紹介します。

「特許分類×キーワード」の相関性から絞る

前の記事では散布図のグラフを使いましたが、今回はマトリックス表を使ってみます。Excelで簡単に作ることができます。

まず、前の記事で紹介したような時系列データを準備します。ここから2種類の技術(ここでは特許分類またはキーワード)をピックアップし、その相関係数を算出します。ExcelではCORREL関数が便利です。

それをマトリックス表にしたのが下表です。のタイトルに選んだ技術(特許分類またはキーワード)を並べ、それらが交差するセルに相関係数を書き込みます。下表では、高い相関を示すセルほど濃いグレーに着色してあります。

ここで、高い相関(一般には0.7以上)を示すセルがあれば、その行と列に示した両技術は、この母集団(ここではバイオマス)の中で同時に現れる頻度が高いと推測できます。

ここで、出現頻度の高い技術をピックアップしていれば、その組み合わせは、その母集団において注目度が高い技術群である可能性が高いと推測できます。

ひとつの技術の出現頻度だけ見ていても、その母集団における重要性はよく分からないことが多いですが、複数の情報を組み合わせること、そしてその組み合わせの数が多いほど、情報の精度が上がります。

上表の場合、赤で示した「セルロース」「発酵」「糖工業」の組み合わせから、セルロース(実際は木質バイオマス)を糖に分解して発酵させることで様々な化合物を創り出す技術に注目度が高いことが推察されます。

また、青で示した「汚泥処理」「改質ガス」「燃料」の組み合わせから、廃棄物を活性汚泥で処理して出たガスを発電等の燃料として利用する技術への注目度の高さが推察されます。

「キーワード×キーワード」の相関性から絞る

行と列に取る技術は、上表で示した「特許分類」と「キーワード」のように、異なるカテゴリを選ぶ方が情報量が多くて精度が高まります。

しかし、同じカテゴリ同士でも、ある程度のことは分かります。下表はキーワード同士の組み合わせです。「燃料」」「燃焼」「木質」の組み合わせが比較的相関係数が高く、実際、木質バイオマスを燃料(ペレット)にして燃焼させてバイオマス発電等に利用する技術がある程度注目されている事実があります。

しかし、キーワードは抽象度が高く、同じキーワードがいろいろな技術分野に使用されることが多いので、実際には強い関連性があったとしても、一般的には相関係数は低めになる傾向があります。

「特許分類×特許分類」の相関性から絞る

下表は、特許分類(ここでは国際特許分類)同士の組み合わせです。

特許分類は、そもそも異なる技術を人の目で精緻に分類してあるため、キーワードの場合ほど曖昧なことはなく、複数の特許分類の組み合わせがあれば、その組み合わせには何等か重要な技術的関連性が隠れていると予測できます。

上表では、「汚泥処理」「改質ガス」「燃焼装置」の組み合わせから、特に活性汚泥または取り出したガスを燃焼させる装置に関する技術開発がポイントであることが推察されます。

また、「微生物・酵素」と「糖工業」に強い相関が認められますが、これは、糖を原料として微生物により化学変換することで様々な有用物質を取り出す技術が、盛んに研究開発されたことを反映したものと考えられます。

以上は、あくまで「過去を振り返ったらそうだったよね」と確認しているに過ぎず、IPランドスケープに求められる「将来予測」「羅針盤」の手前の情報分析をしているに過ぎません。

しかし、これから機械学習やディープラーニングが進み、情報トレンドのパターンが読めるようになってくると、こうしたことも前もって予測できるようになるかも知れませんね。

一方、そのパターンに基づいてどのように行動「するべき」か、また、そもそもどのような目標を掲げてどう行動「したい」のか、AIがいくら発達しようとも、その「答え」を出すのは人間でありたいものです。

お読みいただきまして、誠にありがとうございました!

 

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