以前の記事「サプライチェーンから見る特許調査」にて、特許検索の母集団を取るテクニックに幾つか触れましたが、「発明の名称」で絞る場合について、少しだけ補足です。
母集団を取るテクニック
以前の記事を要約して以下に再掲します。前提はあくまで「予備的調査」。要するに、「漏れ」があっても気にせず、「主要」な案件だけ捉える方法です。
- キーワードで切る:注目したいキーワードを限定してしまって絞り込む。
- 発明の名称で切る:タイトルに書いてあれば目的の特許である可能性あり。
- 登録特許に限定:審査を経て認められたという安定感を買う。
- 特許分類で切る:関係ある特許分類だけに絞り込む。
「発明の名称」で絞るメリット
筆者は上記の4つを割と万遍なく使いますが、いちばん安直なのは「発明の名称」にキーワードを放り込む手段です。
曖昧なタイトルが多い技術分野もあり(たとえば「複合体」「成形体」など)、いつも使えるとは限りませんが、当たれば有効な手段です。
下図は、「森林」をテーマにした調査で、「森林」「山林」「林野」「林業」「里山」といったキーワードを、発明の名称・要約・請求の範囲の各々で検索したケースを示しています。
実際にヒットしたタイトル(発明の名称)とクレーム(請求の範囲)の例は以下の通りです。
タイトルでキーワード検索したものは、目的の特許(森林関連)である可能性が高いです。
一方、クレームで検索したものは、あまり関係ない場合があります。下図では、「森林」が「森林浴」というワードで、たまたま列挙されているだけで、森林に関する特許とは言えないケースです。
このように、「発明の名称」でのキーワード検索は、大きく外すことはあまり無いかと思われます。
「発明の名称」で絞るデメリット
もちろん、デメリットもあります。
大きなデメリットは、キーワードが狭ければ漏れが大きい、ということです。
例えば、このコロナ禍で急激な需要を生んだ「マスク」ですが、「衛生マスク」「衛生部材」「抗ウィルスマスク」「抗菌ガーゼ」など、さまざまな観点のタイトルがあり、キーワードを安直に決め打ちしてしまうと、外す可能性が結構高いです。
そのキーワードが適当か否かは、業界用語みたいなものもあって、特定はなかなか難しいですが、同義語や類似特許検索など、他の手段を補助的に使って、ある程度の試行錯誤は必要かと思われます。
こうした手段には、なかなか正解と言うものが無い、悩ましいポイントではありますが、筆者はまず、「ど真ん中」の特許(間違いなくノイズじゃない特許)を捉えに行くことを最初の方針にしております。
上記の試行錯誤も、どこで「割り切る」か、そのときに与えられた「時間」との勝負かな、と思ってやっている次第です。