これまで、「切り餅」事件についていろいろ考察してきましたが、越後製菓の持つ特許に関する記録を改めてみると、サトウ食品(当時は佐藤食品工業)との争いに伴う無効審判などと並んで、「判定」というのが見られます。(J-PlatPatより)
以下、この「判定制度」について、軽く触れてみたいと思います。
判定制度とは?
簡単に言えば、「特許庁に、特許を踏んでるかどうか、判断を仰ぐ」という手続きです。特許法では以下のように定められており、裁判所ではなく、特許庁が判断します。
1 特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。
2 特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。
この「切り餅」事件では以下の通り、裁判になる前に、佐藤食品から特許に対して判定の請求がなされています。このように、特許訴訟は面倒だし、差止めや損害賠償は求めないけれど、「特許を踏んでるかどうかだけ知りたい」(正確には「技術的範囲」に属するか否か)という場合に使える制度です。
この判定を請求する際、「サトウの切り餅は、越後の特許を踏んでいない、という判断を求める」などと、割とストレートな希望を書きます。
これは逆も可能で、越後製菓の側から、「サトウの切り餅は、越後の特許を踏んでいる、という判断を求める」と請求することもできます。
なお、上記の通り、この判定には相手方(被請求人)が必要です。佐藤が越後に内緒で特許庁とやり取りはできない、という仕組みになっています。
「切り餅」事件での判定結果は?
判定の結果は以下の通り。特許庁では踏んでないと判断しており、裁判所の判断とは異なる結果です。こういうことは、ままあることのようです。
判定制度は使えるか否か?
判定制度は、裁判所での本格的な争いになる前に、特許庁に技術的な判断(特許の技術的範囲に入るか否か)を求めることができるという、紛争解決の利便性を考えた制度です。
しかしながら、以下の理由で、あまり使い勝手が良いとは言えないのでは、と個人的には感じています。筆者の周囲に聞いてみても、利用したことある人はそんなに多くはなさそうです。
裁判よりも費用がかからないし、弁護士や弁理士に鑑定を貰うよりも説得力があるでしょうから、本当は活用できれば良いのですが。両者が友好的な関係性を保てるという、まれ(?)な状況でなければ、なかなか難しいでしょうね・・・