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研究開発の落とし穴(4)~新たな敵との戦い

商品からサービスに軸足を移すと、たいてい、新たな”敵”に遭遇することになります。

新たな敵~「競合サービス」

例えば、自動車の製造販売からカーシェアリングに参入したトヨタの場合、どんなライバル(競合サービス)と出会うでしょうか。

自動車の製造販売の場合、トヨタの競合となるのは、以下のような、いわゆる”メーカー”と思われます(だいたい年間100万台以上を販売するメーカー、乗用車と小型トラックの合計)。

GMフォードFCA(フィアット・クライスラー)、ホンダ日産

☞ ジェトロ-地域分析レポート「2020年の自動車販売・生産は新型コロナの影響で記録的な減少(米国)

これが、カーシェアリングとなった場合、国内で言えば、以下のようないわゆる”サービス企業”が競合となります。

タイムズカーカレコオリックスカーシェアカリテコホンダエブリゴー

☞ カーシェアリング比較360°「カーシェアリング市場動向2021年総括版:主要6社 – ステーション数・車両台数の推移」

ちなみに、各サービスの母体となる企業系列は、タイムズカーは独立系のパーク24、カレコは三井不動産、オリックスカーシェアはオリックス、カリテコは名鉄、ホンダエブリゴーはホンダ。母体の業界もバラバラですね。

事業の種類が全く異なるので、新たなノウハウをいろいろ手に入れないといけないのも大変ですが、顧客層も自動車を購入する層とは若干異なるでしょうし、そして何より、まったく異なる業界の全く異なる”武器”を持つライバルたちにどう対応するのか・・・。とても多く戦略が必要となりそうです。

新たな敵~「代替サービス」

上記で想定した競合は、カーシェアリングをやっている企業群でしたが、そのカーシェアリング自体にも競合となるサービスがあります。ここでは、「代替サービス」と呼びます。

たとえば、レンタカーなどは、カーシェアリングとかなり類似しています。レンタカーは自動車を貸し出すという形態はカーシェアリングと同じですが、レンタカーは「その場限り」、カーシェアリングは「定期契約」(いわゆる「サブスク」)という違いがあります。

一方、”移動する手段”という風に拡大して考えると、タクシー・バス・鉄道、場合によっては飛行機なども挙げられます。実際、鉄道が廃線となりがちな地方では、各家庭に複数台の自動車があったり、代替手段としてバス網が発達したりしています。

さらに、観光地での移動となると、旅行会社がホテルとレンタカーをセットで提供してたりしますし、筆者の場合、地方のちょっとした移動はレンタル・サイクルを利用したりなど、経営主体や手段は千差万別、という感じになります。

こうなると、単なる”自動車の利用手段”に留まらず、”移動手段”まで視野を広げて、事業が成功するための戦略を練り、それに必要な研究開発をする、という手順で考える必要があります。「モノ」を起点にして事業が成功する時代ではない、ということかと思われます。

研究開発に必要な視点とは?

以上のように、自動車という技術ひとつをとってみても、その展開の方向性により、戦略やリソースがまったく異なってくることが分かります。

先に「研究開発の落とし穴~技術と商品の混同」で触れた例で言えば、もともと持っている技術は「不純物を除去するフィルター製造技術」ですが、顧客の視点に立って「不純物を除去するサービス」に展開しようとしています。

しかし、「不純物を除去する」という「価値」を提供する業態はいくつもあって、同じくフィルターを使うサービス(競合サービス)でも低価格があったり訪問サービスがあったりしますし、いっそのこと顧客商品を高純度にして返す(場合により代理販売する)サービス(代替サービス)も考えられます。

そうなると、単に「フィルター製造技術」を持っているだけではダメで、サービス価格も去ることながら、そのサブスク化、訪問やネットによるサービス、顧客商品の製造ノウハウなど、まったく土地勘の無い要素を取り入れねばならず、むしろそちらに研究開発資源を投入せねばならない、なんていうことが十分にあり得ます。

これは、「モノづくり」の視点では準備できないことではないか、と思われ、「ものづくりニッポン」の我々としては、重々、心せねばならないところかと考えます。

「コトづくり」で儲かるか否か?

ところで、日本国内の自動車販売台数は450万台弱、対して、日本国内のカーシェアリングに使われている自動車台数は3万5千台、だそうです。

☞ 日本自動車販売協会連合会「新車年別販売台数(登録車・軽自動車)

自動車の台数だけを考えると、とても儲からない感じもするのですが、あくまで日本国内のカーシェアリングに限った話ですし、何より、今現在の数字でしかありません。上記した代替サービスが今後も出てくるだろうことを踏まえ、「どれだけ先を見越して手を打っておけるか?」も、事業や経営には必要なことかと思われます。

お読みいただきまして、誠にありがとうございました!

 

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