前回、「QRコード」の特許を話題にしましたが、今回は、商標についてです。いずれも、商標権を持っている会社(商標権者)は、株式会社デンソーウェーブです。
QRコードの文字による商標
商標には、文字だけの商標、図形の商標、色彩の商標、音の商標、立体的な商標、動く商標、ホログラムの商標など、いろんな種類があります。
デンソーウェーブが持つQRコードの商標には、大きく分けて文字と図形、2種類あり、文字については、例えば以下の通りです。(J-PlatPatによる商標検索結果より)
- QRコード:日本語の文字
- QR Code:英語の文字
- QRコード|QR Code:日本語と英語、二段に組み合わせた文字
QRコードの図形による商標
図形については、例えば下表の通りです(J-PlatPatによる商標検索結果より)。スマホのアイコンなどで使われているものですね。
- QRの文字を二段で表記、背景にQRコードの透かしのような図形あり
- QRの文字を一段で表記、背景にQRコードの透かしのような図形あり
- QRの文字を一段で表記
商標の機能・商標権の意義
「QR」というのは、「Quick Response」の略、「素早く読み取る」という意味合いだそうです。
しかし、「QR」という文字の組み合わせ自体、そもそも意味は無かった訳で、デンソーウェーブが様々な努力をした結果、「QRコード」として有名になったものです。
そして、「QRコード」と言えば、あの白黒の細かい市松模様のような記号で、レジなどでそれを読み取る装置にかざせば、「ピッ」と素早く値段を読み取ってくれる、あの機械や仕組みのことだと、誰もが知っています。それが如何に便利かは、みなさんがご存じの通りかと思います。
商標権というのは、デンソーウェーブがQRコードについて行ったような企業努力を評価し、その結果として築いた信用を保護する、そのために与えられる「独占権」です。
「QRコード」という商標を、どのような商品やサービスに対して、どのように使用するかは、デンソーウェーブが独占的に決定できます。
もし、他社が似たような二次元コードを提供していても、「QRコード」という商標はデンソーウェーブにしか使用を許されません。なので、「QRコード」の文字が表記されていれば、または、あの「QRコード」の図形が表記されていれば、それはデンソーウェーブが提供しているものだと、ユーザーは他社と区別することができます。そのような「識別力」を与えるのが、商標の大きな機能のひとつです。
商標が「識別力」を持つ結果、ユーザー側としても、QRコードといえばデンソーウェーブが開発したという「出所」が分かり、それは確かに機能する二次元コードであるという「品質」が分かり、安心して使えるという利便性があります。
その結果、デンソーウェーブが築いた「信用力」が保護され、デンソーウェーブ以外の他社が無闇に「QRコード」を名乗って偽物が広まるのを防ぐことができます。
以上のように、商標権というのは、商品やサービスを提供する企業を保護すると同時に、それを利用するユーザーを保護するという機能を併せ持っています。
商標は技術をひと言で表現する役割も
QRコードというのは、先に特許に関する記事で触れた通り、その中身はかなり複雑です。それを説明しようとすると、特許の明細書に記載されているように、非常に長い説明になってしまいます。
しかし、今となっては、「QRコード」というひと言で表現することができます。一般ユーザーであれば、あの二次元コードを一発で読み取る機能なんだと理解できますし、専門の技術者であれば、あの特許に書いてある複雑な技術の構成を、すぐに思い浮かべることができます。
商標というのは、そういった技術を表現する”シンボル”(象徴)という役割もあります。そのような商標の機能を如何に利用するか、それが「ブランディング」「ブランド戦略」ということであり、デンソーウェーブは、それを非常に巧妙にやり遂げた、と言えるかと思います。
そう簡単に真似ることはできませんが、何とか似たようなことができないものか、筆者も自分が携わる事業開発で、日々悩んでいる次第です。