先に「新たな敵との戦い」について触れましたが、それに関連して、これから参入しようとする市場において、先行他社が居た場合、そこを競合とみなすか、それとも、協業先または顧客とするか、という選択があります。
顧客への価値提供の違い
たとえば、自動車メーカーの場合、まずは顧客に対するポジションとして、「製造販売」(モノ)と「サービス提供」(コト)、どちらを選ぶのかという問題があります。
それを図示すると下図のようになります。前者は顧客の「所有したい」という要求に対して価値提供するのに対して、後者は顧客の「移動したい」に対して価値提供します。
いずれも、単純な商品販売かサービス提供かの違いに留まらず、それに付随して提供する価値(定期点検やパーツ交換か、それとも、ネット予約や乗り捨てか)も、全くと言って良いほど変わってきます。
このいずれを取るかで、必要なノウハウや割くべきリソースが異なりますから、この選択は非常に大きな判断と決断を要します。
競合?顧客?協業先?
米国でウーバーによるカーシェアリングが出現したころ、まずはタクシー業界に衝撃が走りました。日本では認められていない、個人の自動車に有料で便乗させる商売(いわゆる「白タク」)を、スマホを使った位置情報システムと利用者からの評価システムを連動させるという、とても戦略的なサービスでした。
一方、自動車メーカーにも大きな衝撃が走りました。すごく端的に言えば、「このままでは、顧客との接点は全て、ウーバーに奪われてしまう。自動車メーカーはウーバーの単なる下請けになってしまう。」という危機感でした。
この場合、ウーバーを競合とみなして対峙するか、協業先として提携を模索するか、それとも顧客とするか、いくつかの選択肢があるかと思います。
どれが正解というのは無いと思います。どちらが高い利益を上げられるか、安定的な収益が確保できるのはどちらか、顧客情報をガッチリつかみたいか否か、などなど。各社で経営判断の基準は様々だと思います。
しかし、どのような経営方針に基づいて、いずれを選ぶか、しっかり決める必要があります。それにより、少なくとも獲得すべき知財の種類が全く変わってきます。例えば、攻めの知財と守りの知財、オープンとクローズ、どちらを充実させるべきか、ということです。
そういったことに道行き示す”羅針盤”たることも、IPランドスケープの重要な役割かと思います。