テーマ別の特許動向を、Fタームの5桁で構成されるテーマコード毎に俯瞰する試みをしています。
今回は、テーマコード2B029「温室」。
2012年1月1日以降の約10年間に出願された特許及び実用新案が対象。J-PlatPatにて1445件がヒットしました(2022年7月23日現在)。
ただし、このテーマには複数の技術分野が混在しているため、もう少し細分化してみたいと思います。今回は、制御システム(特許分類FIではF24、113件)に着目します。
頻出キーワード
「温室」から想像できる通り、空調に関するキーワードが多く出現しています。
※ユーザーローカル社のサイト「AIテキストマイニング」を利用して、発明の名称および要約の頻出キーワードをクラウド表示したもの(上図が発明の名称、下図が要約)。名詞、動詞、形容詞は色分けされている。
出願件数推移およびランキング
最上位のフルタ電機は、農園関連の送風機で最大シェアを誇ります。
二位のダイキン工業は、「空気で答えを出す会社」というキャッチフレーズで、空調関連のソリューション分野にて世界最大手メーカーです。
三位の三洲産業は、鉄道やクレーンのレール関連の専業メーカーです。
制御システム関連に絞ったせいか、最近まで安定して出願している企業は少ない模様です。
※出願件数の推移は出願年毎に表記。2020年出願分は全て公開されているはずなので、それ以前の経変変化は確定データ。
出願人×キーワード相関
各社が特徴とするキーワードのプロファイルを、折れ線グラフで比較したものです。「ブルーオーシャン戦略」に出てくる「戦略キャンバス」みたいなものを想定しております。
各社の特徴キーワードはバラバラです。このデータだけで言えば、一般論ですが、ここに登場する企業同士は、競合の度合いが低いという可能性があります。
ピックアップ(1)~情報処理装置
以下、筆者の独断と偏見で2件をピックアップ。まずは、富士通による「情報処理装置」。
これは、果実などの生育の具合が、温度や日照時間に影響されることに着目し、果物や野菜の種類ごとの生育条件をデータ化して、温室の温度条件等にフィードバックして最適化するシステムの発明です。
温度の積算が生育に影響するというのは、素人の筆者には目新しくて興味深い点です。また、生育条件データをビッグデータとして保有していることが前提になる、今の時代ならではの発明とも言えますね。
ピックアップ(2)~浮舟
次は、クラフトワークスによる「浮舟」です。
「浮舟」というタイトルから、何やら情緒深いものを思い浮かべますが、技術的には、農作物や食料品を育成または保管するのに、河川等の安定した水温を利用して省エネを図るという発明です。吸湿性や保温性を持つ凝灰岩を利用している点がミソです。
発明の構成としては、厚みや長さなど、箱に関する意外と簡単なパラメータと素材で規定して特許になっていて、参考になります。