テーマ別の特許動向を、Fタームの5桁で構成されるテーマコード毎に俯瞰する試みをしています。
今回は、テーマコード2B026「海藻の栽培」。
2012年1月1日以降の約10年間に出願された特許及び実用新案が対象。J-PlatPatにて297件がヒットしました(2022年7月22日現在)。
頻出キーワード
ユーザーローカル社のサイト「AIテキストマイニング」を利用して、発明の名称および要約の頻出キーワードをクラウド表示したものです(下図の内、最初の図が発明の名称、次の図が要約)。名詞、動詞、形容詞は色分けされています。
「海藻の栽培」から、普通に思い浮かぶキーワードばかりにも見えますが、「酸」や「原液」など、筆者のような門外漢には意味がすぐには分からないものも散見されます。これらは後述する事例にて見てみたいと思います。
出願件数推移およびランキング
出願件数の出願年毎の推移を折れ線グラフと表形式で表したものです。2020年出願分は全て公開されているはずなので、それ以前の経変変化は確定データとなります。
最上位の日本製鉄(旧・新日鐵住金)は現在、日新製鋼と合併していますが、出願人の名称はそのままになっています。最近まで比較的安定して出願しているのは、日本製鉄、光洋通商、太平洋セメントくらいで、あとは件数も少なく、出願も散発的です。
出願人×キーワード相関
各社が特徴とするキーワードについて、そのプロファイルが比較しやすいよう、折れ線グラフにしてみました。「ブルーオーシャン戦略」に出てくる「戦略キャンバス」みたいなものを想定しております。
各社の特徴キーワードは意外とバラバラです。その中、「酸」は、各社に比較的共通して出現するキーワードです。これは後述する事例でも触れますが、海藻の生育促進や雑菌除去に必要とされるものです。
ピックアップ(1)~箱型船
以下、筆者の独断と偏見で2件をピックアップ。まずは、光洋通商による「箱型船」。
これは、海苔などを海上で大量に酸処理するための設備です。海苔などの海藻類は雑菌などに弱く、養殖中に死滅する被害を受けるリスクが高い海産物です。それを防ぐために、酢酸などに漬けて処理する、いわゆる「酸処理」が定着しています。
しかし、酸処理は海苔の風味を損なう処理でもあるので、近年では酸処理をしないことでブランディングしている海苔メーカーも見られます。無農薬や有機栽培と似たようなものですね。
ピックアップ(2)~バイオガス発電装置
次は、大和ハウス工業によるバイオガス発電装置に関する発明です。
本発明は、有機性廃棄物からメタン発酵によりバイオガス(メタンガス)を取り出すのが主目的ですが、それに伴って発生する廃棄物をさらに利用して海藻類を養殖し、併せて発生する炭酸ガスや熱も有効活用しようという、”使い尽くし”の技術です。
これが、エネルギーバランスや費用対効果でどれほどメリットがあるかは分かりませんが、技術的な発想としては、環境負荷低減と資源有効活用に深く配慮した内容かと思われます。