テーマ別の特許動向を、Fタームの5桁で構成されるテーマコード毎に俯瞰する試みをしています。
今回は、テーマコード:2B019「釣り竿」。
2017年以降の約5年間に出願された特許及び実用新案が対象。J-PlatPatにて295件がヒットしました。
出願件数推移
出願件数を出願年毎に並べたものです。2020年出願分は全て公開されているはずなので、テーマ全体的には維持傾向かと思われます。
出願件数シェア
この約5年間を見る限り、グローブライドとシマノが、張りあっているように見えます。
グローブライド株式会社は、年配の方にはダイワという名称の方が馴染みがあるかもしれません。フィッシング、ゴルフ、テニスなどの用具の大手メーカーです。
株式会社シマノは、自転車、フィッシング、ボートなどの用具の大手メーカーです。筆者の周囲にはロードバイク乗りが多いのですが、ペダルや変速機など、シマノのギアにハマっている人が少なくありません。
出願人×キーワード相関
出願件数上位のグローブライドとシマノの2社について、発明の名称をテキストマイニングして比較したものです。
上位に出現するキーワードは両社とも似通っており、使っているキーワードは若干違うものの、釣り竿本体やリール等の部品など、両社とも似たようなポートフォリオに見えます。
頻出キーワード
ユーザーローカル社のAIテキストマイニングにより、要約の頻出キーワードをクラウド表示したものです。名詞、動詞、形容詞は色分けされています。
グローブライドとシマノが多数を占めるため、当然ながら、両社が使うキーワードが多数を占めています。
係り受け解析
同じくユーザーローカル社のAIテキストマイニングより、出現したキーワードの感情分析(ポジティブかネガティブ、どちらで使われているか)を、AI解析により判別したものです。
シマノは電動式リールに関する出願を多く出しており、「電源」はシマノに特有のキーワードとなります。「なりにくい」というのは、電源コードが釣り竿の手元で邪魔になりにくい構造の発明に由来します。
ピックアップ(1)~釣竿のグリップ
以下、筆者の独断と偏見で、気になる特許を4件ほどピックアップ。
まずは、シマノによる釣竿のグリップに関する発明です。上述でも触れましたが、電動式リールの電源コードを、グリップに設けた溝部分に通せる構造をとることで、コードが邪魔になりにくい工夫がされています。
ただし、未だ審査前なので、登録になるかどうかは不明です。
ピックアップ(2)~釣り状況の管理システム
グローブライドによる釣り状況を管理するためのシステムに関する発明です。
これは、魚が釣り針にかかった状態(いわゆる「アタリ」)を、釣り竿への振動の信号として記録し、アタリの状態を学習・再現するシステムです。
これにより、例えば釣り名人がアタリの前後でどのようにアクションするかを、アマチュアが学習したり、また、自身のアタリ前後のアクションを記録し、それを後で振り返るために利用したりすることが想定されています。
ピックアップ(3)~釣具の識別・管理システム
グローブライドによる釣具を識別したり管理したりするシステムに関する発明です。
釣り道具は、釣り竿、リール、仕掛けなど、多種多様な道具を、いかに組み合わせて好み又は最適にセッティングするかが勝負みたいなところがありますが、あまりに多くの道具があるため、それらを記憶して組み合わせるのは、職人技的な側面があります。
この発明は、それをシステムとして管理し、最適な組み合わせを促すためのものです。店舗での品揃えにも威力を発揮することが期待されています。
ピックアップ(4)~釣り動画の撮影システム
株式会社amuse oneselfによる、釣り動画を撮影するシステムに関する発明です。
撮影用のドローンは、釣竿に装着された端末により操作され、釣り糸に結び付けられた目印となるLEDライトを頼りに、釣りの状況を撮影するという、割とシンプルな仕組みです。
LEDのメリットは、浮きと一緒に水中に没した場合でも、位置を見失い難く、ドローンによる追尾を容易にするという役割があります。
釣りにもAIやIoTが利用され出しているようですが、グローブライドとシマノの二大メーカーの動向を見れば、まだまだ新規参入の余地があるようにも思われます。