国策が特許動向に影響を与えることは多々あるかと思います。
筆者が勤務先で携わる森林活用に深く関連する「バイオマス」もそのひとつです。
バイオマスに関する国策
農林水産省の大臣官房環境バイオマス政策課が令和4年2月付で公表している「バイオマスの活用をめぐる状況」に、バイオマスに関する政策がまとめられています。
これを見ると、2002年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」というのを大々的に打ち出して、廃棄物や未利用となっているバイオマスの活用推進がスタートしています。
その後、地方自治体毎の政策に広がり、いわゆるFIT制度の導入、バイオマス活用に関する研究開発の国家プロジェクトなど、次々と政策が打ち出され、SDGsの追い風もあいまって、バイオマスがますます盛り上がって現在に至ります。
バイオマスに関する特許動向
一方、バイオマスに関する特許動向について、主な国際特許分類(IPC)毎の動向を下図に示します。タイトルに「バイオマス」を含む国内特許出願を時系列で並べたものです。
これを見ると、2000年前後から、廃棄物処理・ガス化・発酵などに関する特許が徐々に増加し、2010年、2015~16年頃にピークを示しております。
これを見ると、「バイオマス・ニッポン」の国策が特許動向に影響を与えていることは、想像に難くないところです。
特許が減少傾向に向かう原因
しかし、2015~16年以降は、減少傾向であることが分かります。
一般的に、特許出願が減少する理由としては、以下が考えられます。
- 当該分野の”ブーム”が過ぎ去るか、または有望でなくなり、研究開発の縮小や撤退が進んでいる場合
- 当該分野の研究開発競争がひと段落し、市場でのシェア争いに移行している場合
特許分類とキーワードの使い方
ちなみに、主要なキーワードに関する動向は下図の通りです。この場合は、似たような動向を示しているかと思われます。
特許動向を見る場合、特許分類とキーワード、どちらを使うのが良いかは、特に明確な基準はないかと思います。
ひとつの考え方として、「バイオマス」のように、バズっているキーワード(バズワード)に関しては、それにまつわる複数の技術分野で研究開発が勃興していることがママあります。
そうした技術動向を俯瞰したい場合は、バズワードで母集団を作って特許分類で動向を切るというのが、俯瞰するのには便利かと思っています。
特許分類とキーワードが逆でも良いのですが、筆者個人的には、関連する他の技術分野をあまり見なくなる可能性があるので、手間が掛かって面倒ではありますが、両方の切り口で見るようにはしています。(いつもいつもはできませんけど・・・)