これまで、「切り餅」事件に絡めて、知財戦略について、何回かに分けて触れてきました。
「知財戦略」という話になると、どうしても「他社を”攻略”する」ことに目が行ってしまい、「顧客が置き去り」になり勝ちと、筆者は気になっています。
もう少し、自分にもメリットがあり、顧客にもメリットがあり、何なら、競合にもメリットがある。そういう、”超”前向きなビジネスが考えられないものか?そんなことを日々、”妄想”しております。
そこで、それを実現する鍵になるかも知れない、いわゆる「オープン&クローズ戦略」という話に、ソロソロと触れてみたいと思います。
改めて、オープン&クローズ戦略とは?
オープン&クローズ戦略については、以前も触れたことがあります。以下がリンクです。
改めて振り返ると、「買い手」の視点が以下のステップだ、という話をしました。
- まずは「商品」の魅力を知る
- しかる後にそれの「売り手」を選ぶ
また、それを前提にオープン&クローズを考えると、以下だという説明をしました。
- Open:商品の魅力 ☞ 周知化の仕掛け ☞ 顧客・協業が注目 ☞ 市場が最大化
- Close:自社の魅力 ☞ 利益化の仕掛け ☞ 競合・顧客を牽制 ☞ 利益を最大化
そして、そのことを以下のように図示しました。
「買い手の視点」に立ったつもりでしたが、一方で、「競合を排除する」ことを前提にした考え方になっています。
これは、競争戦略を前提にすれば普通の考え方でしょうし、いわゆるオープン&クローズ戦略も、競争戦略のための手段と理解されている向きも多いかと思われます。
しかし、そのことが、オープン&クローズ戦略の可能性を狭めてはいないだろうか?昨今よく言われる共創・協創と、どう整合させるか?筆者は日々悩んでいる次第です。
”三方よし”のオープン&クローズ戦略とは?
そこで、”三方よし”のオープン&クローズ戦略というものが考えられないか?少し考察してみたいと思います。
”三方よし”とは、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という、昔の近江商人の言葉として知られています。(昔じゃなくて言われ出したのは最近、という話もあるようですが・・・)
それは、これも最近流行(?)になっている、Creating Shared Value(CSV)とも親和性があるとして、話題にする向きもあるようです。誤解を恐れずに簡単に言ってしまえば、「世のため・人のため」になるような事業、ということかと思います。
しかし、この「売り手」「買い手」「世間」という構図の中には、3C(Customer, Competitor, Company)言えば「自社」と「顧客」は入ってますが、「競合」は入っていないように思われます。(「世間」に入ってるのかも知れませんが・・・)
CSVという考え方の中にも、「競争による価値向上」という視点はあるようですが、「競争しつつ共創」という視点は入れられないものか?筆者の悩みはそこにあります。
「自社」と「競合」の関係に視点を絞れば、
- 「商品の魅力」を共に考え、Openの仕掛けを共に創り、顧客への提供価値を共創する
- 「各社の魅力」を各々で考え、Closeの仕掛けを各々で創り、切磋琢磨により提供価値を増大する
といったことかと思われます。図示すれば以下のような感じかと。
つまり、筆者の考えている”三方よし”とは、「自社」「競合」「顧客」の”三方よし”です。その三者が共創することによって「世間よし」を実現する。そんなことができればなあ、と思う次第です。(”四方よし”じゃない?と言われるかも知れませんが、話がややこしくなりそうなので、そっとしといていただければ・・・)