特許分類「Fターム」(特にFタームの5桁で構成されるテーマコード)を利用して、技術テーマ別の特許動向を俯瞰する試みをしています。
今回は、テーマコード2B034「土作業機(4)その他」。
土作業機のFタームは4種類に分かれており、「手作業機」「プラウ・ハロー」「ロータリ」と続いて、最後は「その他」。
ここまでは、耕したり整地したりするマシンやアタッチメントといった、農作業期の”主役”となる機器が主でしたが、この技術分類は、それらを支える周辺技術と言えます。
2012年1月1日以降の約10年間に出願された特許及び実用新案が対象。J-PlatPatにて765件がヒットしました(2022年8月1日現在)。
頻出するキーワード
この技術カテゴリは、同類の土作業機と重複するため、特に「その他」に特有のキーワードは目立って見受けられません。
※ユーザーローカル社のサイト「AIテキストマイニング」を利用して、発明の名称および要約の頻出キーワードをクラウド表示したもの(上図が発明の名称、下図が要約)。名詞、動詞、形容詞は色分けされている。
出願件数推移およびランキング
前回「ロータリ」で見たのと同様、農作業機の本体を製造販売するヰセキやクボタなどの大手メーカーと、アタッチメントの製造販売を行う小橋工業や松山が上位に来ています。
それら上位メーカーは比較的コンスタントに出願しているように見受けられますが、ここ10年で全体としては減少傾向にあります。
※出願件数の推移は出願年毎に表記。2020年出願分は全て公開されているはずなので、それ以前の経変変化は確定データ。
出願人とキーワードの相関~特許戦略キャンバス
前回も触れた「特許戦略キャンバス」による情報分析を試みます。下図のように、出願人毎の特徴キーワードのプロファイルを、折れ線グラフで比較します。
小橋工業の「畦」と「塗り」が目立ちますが、これも前回触れた通り、小橋工業が「畦塗り機」に注力していることの表れかと思われます。同じくアタッチメントを製造販売する松山も同様のプロファイルを示しています。
その中、小橋工業と松山の相違点に着目するため、下図の少ないプロファイルの部分に着目すると、小橋工業では「制御」、松山では「システム」のキーワードが少し目立っています。
両社とも畦塗り等の作業において、土地の形状等に応じてトラクタの動きや向きを制御するシステムに関する技術を出しています。
両社の比較において、松山は近年に出願を増やしており、小橋工業よりも、カメラやGPSを利用することが特徴と見て取れます。
ピックアップ~農作業機のリモコン装置
ここで、農作業機械を制御するシステムとはどういったものか、小橋工業の発明のひとつをピックアップして見てみます。
これは、無人作業を含む遠隔操作で農作業機械を操作する発明ですが、特に畦塗り作業において、畦の方向や形状と畦塗りのアタッチメントの向きや動きが合っているかを検知して、適正な作業状態となるようにフィードバック制御するといった技術内容です。
この田んぼや畦の状態を、どのような技術やパラメータで検知・制御するかが、この技術分野の課題のようです。