テーマ別の特許動向を、Fタームの5桁で構成されるテーマコード毎に俯瞰する試みをしています。
今回は、テーマコード:2B022「植物の栽培」。
2017年以降の約5年間に出願された特許及び実用新案が対象。J-PlatPatにて2062件がヒットしました。
ちょっと件数が多めなので、今回はその中から、特許分類FI:G06「データ処理システム」に絞り、297件を母集団として分析しました。
出願件数推移
出願件数を出願年毎に並べたものです。2020年出願分は全て公開されているはずなので、テーマ全体的には維持または微減傾向かと思われます。
その中、農業食品産業技術総合研究機構とASSESTの伸びが目立ちます。
出願件数ランキング
農業食品産業技術総合研究機構、ヤンマー、クボタの上位3社は、まさにこの技術分野である農業を含む植物栽培に関して、研究や事業を行っている会社です。
一方、キャノン、ソニー、富士通などは、明らかに農業関連でなく電機・IT関連ですが、農業などの分野に関してそれなりの技術開発を行っている模様です。
出願人×キーワード相関
出願件数上位の内、事業会社であるヤンマーとクボタの2社について、要約をテキストマイニングして比較したものです。
いずれも、マップ、位置情報、画像等のデータを用いて、生育状況や収穫量などを観察・予測するシステムを出願しており、農業機械の製造販売としても、明らかにライバル関係にある両社です。
頻出キーワード
ユーザーローカル社のAIテキストマイニングにより、発明の名称の頻出キーワードをクラウド表示したものです。名詞、動詞、形容詞は色分けされています。
母集団として「植物の栽培」×「データ処理システム」を取っているので、当然ながらそれに関連したキーワードが多数を占めます。
一方、このクラウド表示ではわかりづらいですが、機械学習、ディープラーニングに関する発明が結構多くを占めています。
係り受け解析
同じくユーザーローカル社のAIテキストマイニングより、要約について出現したキーワードの感情分析(ポジティブかネガティブ、どちらで使われているか)を、AI解析により判別したものです。
GPSやドローンを使った画像撮影によるマッピングの技術が多いため、領域、位置、空間、などのキーワードが挙がってきています。
ピックアップ(1)~農業支援システム
以下、筆者の独断と偏見で、気になる特許を3件ほどピックアップ。
まずは、クボタによる農業支援システム。「下町ロケット」でも出てきましたが、GPS等の位置情報を利用してトラクター等の農業機械を操作する、というのが典型例です。本件は、ドローンを利用しています。
ピックアップ(2)~緑化シェードシステム
三菱電機と鈴田峠農園との共同による緑化シェードシステムに関する発明です。
よく屋上緑化などで、いわゆる「ヒートアイランド」現象を緩和しようという動きがありますが、時間帯や日照状況などで、必ずしも有効に機能しないことがあります。
本発明は、緑化シェードにより日陰になる部分とそれ以外の部分について、日照データや温度等を参考にしながら、適切に散水できるようにコントロールするシステムになっています。機械学習も利用しています。
また、発明の構成がかなりシンプルで、目の付け所を工夫すれば広めの特許が取れるという、参考になるクレームかと思われます。
ピックアップ(3)~食材調達システム
東京ガスによる、ある料理を作るための食材を調達するためのシステムに関する発明です。
特に、例えば「けんちん汁を作ろう!」と計画を立て、しかも、その食材を全て「自家栽培」にて調達しよう、というケースが想定されています。
まず、けんちん汁を食したい日時を決め、けんちん汁のレシピを作成し、それに必要な材料をブレイクダウンし、それらの栽培に必要な日数を計算して、期日に間に合うよう、食材栽培キットを届けるという、ちょっと気の長いシステムです。
料理と言うよりも栽培に重きを置いた発明に見えますが、食卓に料理が並ぶ場面をゴールにしているところが、とてもユニークな発明に仕立てています。