テーマ別の特許動向を、Fタームの5桁で構成されるテーマコード毎に俯瞰する試みをしています。
今回は、テーマコード:2B003「人工魚礁」。2017年以降の約5年間に出願された特許及び実用新案が対象。J-PlatPatにて47件がヒットしました。
出願件数推移
この約5年間で最も出願件数が多いのは岡部株式会社の4件。建築用金属部材を主力製品とするメーカーです。フリー工業は土木工事関連の施工と建築部材販売を手掛ける会社、海中景観研究所は隠岐の島に本社がある水域環境保全の会社です。
出願人×キーワード相関
魚礁に関する特許のタイトルをテキストマイニングして並べたのですが、あまり特徴的なキーワードは出てきませんでした。細かく見れば、鉄分やリンなどの栄養素に関する発明など、特徴的なものがあります。
岡部株式会社には「浮魚礁」の発明が見られますが、魚礁には海底に固定するものと海中に吊るす形態のものがあるようで、全体的にはコンクリート製のブロックで出来た固定式が多いように見受けられます。
頻出キーワード
ユーザーローカル社のAIテキストマイニングにより、要約における頻出キーワードをクラウド表示したものです。名詞、動詞、形容詞は色分けされています。この分野で注目されている課題や解決手段を見出す目安になるものですが、本テーマは似たような課題や解決手段が多いようで、あまり特徴的なキーワードは見当たりませんでした。
係り受け解析
出現したキーワードの感情分析(ポジティブかネガティブ、どちらで使われているか)を、AI解析により判別したものです。技術課題を俯瞰するのに便利です。
魚礁は海洋生物を集めて産卵等を促す役割がありますが、例えばサンゴなどを増やす場合、サンゴが誘引されて付着しやすい材質を選ぶのは大きな課題のようです。
ピックアップ(1)サンゴ幼生の着生誘引方法
以降、筆者の偏見で幾つかの特許をピックアップ。まずは、いであ株式会社の発明。
具体的な写真が図示されており、基盤に1mm以下の小さな穴を開けておくと、サンゴ幼生が誘引されて付着し、増殖が促進されるそうです。基盤の材質は何でもよく、とにかく穴の大きさが重要、というのが興味深いところです。
ピックアップ(2)サンゴの増殖方法
次は、「サンゴの増殖方法」。個人による出願で登録になっています。
発明の構成は割とシンプルで、鉄を含む素材を海底に固定し、表面を削るなどして鉄を露出させておくと、サンゴ幼生が誘引されて付着するそうです。なかなか興味深い習性ですね。
ピックアップ(3)人工漁礁の形成方法および形成システム
最後は、廃車を海に沈めて人工魚礁にしようという、なかなか大胆な発明。ちゃんと登録になっています。
この発明は、廃車全体を加熱(蒸し焼き)にして炭化処理(下図)することで、車体の鋼板による枠組みを保持しつつ、炭化された内装材を魚礁として機能させ、かつ、水質浄化も実現するという、ダイナミックに環境貢献を目指した発明です。アイデアがすごいですね。